研究課題/領域番号 |
24730148
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
辻上 奈美江 東京大学, 総合文化研究科, 特任准教授 (30584031)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ジェンダー / 権力 / アラブ革命 / イスラーム |
研究概要 |
本研究は、2011年のアラブ革命を研究の出発点に据えながら、グローバル/トランスナショナルな関係からいっそう注目されるようになった中東地域のジェンダー秩序について権力の観点から考察しようとするものである。本研究では、申請者がこれまで研究対象としてきたサウディアラビアを中心に据えつつ、同時にアラブ革命の影響を大きく受けた国、そうでない国のジェンダーの動向にも着目して研究を遂行することを目的としている。 本研究の関心は、アラブ世界に地殻変動をもたらしたアラブ革命が、ネオリベラル世界政治の中でどのように位置づけられ、そしてそれはジェンダー秩序にどのような変容を迫るのかである。本研究は、テーマ1.グローバル政治におけるアラブ革命とジェンダーの解明、テーマ2.トランスナショナル空間におけるアラブ革命とジェンダーの解明、テーマ3.国家レベルから見たアラブ革命とジェンダーの解明の三つの相互に関連するテーマの解明を通じて完成させる。 本研究は、平成24年度および平成25年度の2年間にわたって、主に文献調査および現地調査によって遂行することとなっており、初年度である平成24年度は、本研究に関連する文献の収集と読み込み、そしてチュニジア、エジプト、サウディアラビア、バハレーンの四カ国を対象に現地調査を行った(チュニジア、エジプトについては、他研究費を使用した)。調査対象国に上記4カ国を選定したのは、チュニジア、エジプトという政変を経験した国と、サウディアラビアおよびバハレーンという政変を経験しなかった国について、政変のインパクトについて対比的に照合する必要性があったからである。今後の研究では、とりわけ抗議行動への女性の参加、移行政権における女性の参加の有無、イスラーム政権台頭のインパクト、レント(不労所得)の有無などに焦点を絞って検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下の理由から、現段階では研究は順調に進展していると判断できる。 第一に、本研究ではチュニジア、エジプト、サウディアラビアおよびバハレーンを調査対象としているが、平成24年度には全4カ国において調査を実施することができた。とりわけ、サウディアラビア以外の国での現地調査は研究者にとって初めての試みであったが、すべての国における調査期間はぞれぞれ1週間程度と限定的であったにもかかわらず、現地の人びとの協力を得てインフォーマントを開拓し、インタビューを実施することができた。また、現地でしか購入できない書籍等の資料を入手することができた。 第二に、「アラブの春」に関する書籍や資料が、アラビア語、英語そして日本語で数多く発表されたため、期待通りの資料を入手し、読み込み作業に進むことができた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる平成25年度は、引き続き資料収集を行いつつ、フォローアップのための現地調査にくわえて、調査・研究の成果を学会及び研究会において発表し、議論をより精緻化する。また、論文執筆を通じて、成果発表をするが、最終的には単著として研究成果を発表することを検討している。 日本中東学会年次大会、北米中東学会(MESA)および国際人類学学会(IUAES)での研究発表のほか、本務校にて調査対象国の専門家を招いた研究会の開催を予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
資料購入費25万円、フォローアップ調査旅費(チュニジア、エジプト、サウディアラビア、バハレーン)80万円、学会発表旅費(大阪、アメリカ、イギリス)75万円、研究補助アルバイト謝金12万円、論文印刷費など5万円を予定している。
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