研究概要 |
25年度は、これまでの労働集約型で階級による古典的社会運動やA. メルッチやA. トゥレーヌらの「新しい社会運動」とも異なる、C. Mouffe, “Artistic Activism and Agonistic Spaces”(2007)やN. Klein, No Logo, new ed.(2009)に散発的に見られた、ダンスやサウンドシステム、仮装や広義の芸術表現といったシャリバリに近い現在の規範変容的文化からなる「ポスト-新しい社会運動」(S. Hall, 1999)とも呼ぶべき現象のグローバルな展開について、現在の世界的潮流を鳥瞰するとともに、実際の現場での定点的な参与観測を通じて、理論化を本格的に行った。 とくに今年度の実績は、これまでのKriesi, D. Della Porta & D. Rucht eds, Social Movements in a Globalising World (2009)等では不十分であった国境横断的な運動の主体にかんする記述や、既存の国際関係研究では「グローバル・ジャスティス運動=NGOやグローバル市民社会」と一般に流布している定式とは異なる政治主体として、類縁集団らによる国境を越えた連帯と運動のフォーマットの伝播を明らかに出来たことである。 また、過去の日本と世界の社会運動の系譜をたどることで、現代の社会運動論との連続性を見出すとともに、グローバル・ジャスティス運動の生成と規範のカスケードによる伝播と定着が、たんにリアルな条里空間という場のみならず、サイバー・スペースという平滑的・象徴的な場において主体化し媒介となっている現象についての分析を行った。これら本年度の研究実績は論文や学会報告、書籍等で発表することに成功し、当初の研究計画以上の成果を上げることができた。
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