研究課題/領域番号 |
24730170
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
小阪 みちる 上智大学, 国際教養学部, 助教 (50612082)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 輸出企業 / 金融制約 / 国際相対価格 / 為替レート |
研究概要 |
本研究の目的は、異質な生産性を持つ輸出企業が、金融市場において金融制約に直面している場合に、海外市場においてどのような参入・退出行動およびマークアップ決定行動をとり、国際相対価格の変動にどのような伝播効果を及ぼすかについて解明することである。平成24年度の成果として、論文“Credit Constraints, Firm Entry, and Exchange Rate Pass-Through”を執筆したことが挙げられる。この研究では、金融危機下での為替レートのパススルーを詳細に考察するために、輸出企業の信用制約が、企業の設定する輸出価格への為替レートのパススルーにどのような影響を与えるかについて、企業の異質な生産性、参入と退出、そして内生的に決定されるマークアップ率を考慮した理論モデルを用いて明らかにした。静学的な分析を行い、企業の参入が起こらない短期と企業の参入が起こる長期では、為替レートのパススルーの度合いが異なるという理論的結果を得た。従来の既存研究では、為替レートのパススルーの短期・長期での違いについて理論的に解明したものは稀少であり、今後、企業別のデータを用いて実証分析していく重要性を示せたという点で有意義であったと考える。この成果は2013年6月に開催される日本経済学会で発表する予定であり、2013年度内に国内のいくつかのセミナーでも発表する予定である。 また、企業物価と金融制約との関連を実証的に分析するために、日経NEEDSデータベースを用いて、日本銀行が作成している輸出物価指数の財部門別に、部門別の借り入れ依存比率などの金融指標を構築し、輸出物価指数と合わせて部門別のパススルー率と各種金融指標との関係を分析できるよう、データセットを作成している途中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
輸出企業の直面する金融制約が、名目為替レートと実質為替レートの相関関係にどのように影響するか、また、交易条件にどのように影響するかについて分析するという二つの軸を見据えて研究を開始したが、平成24年度では、主に前者の目的に貢献する論文“Credit Constraints, Firm Entry, and Exchange Rate Pass-Through”を執筆することができたため、研究目的はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度中の研究は理論的分析が主であった。平成25年度以降は、平成24年度に執筆した論文“Credit Constraints, Firm Entry, and Exchange Rate Pass-Through”で行った静学的な理論分析をさらに発展し、動学的一般均衡分析に発展させる必要がある。また、理論的分析のさらなる発展に加えて、物価と金融制約との関係を分析するために、データを構築していく作業が必要となると考える。現在作成中である、日本の輸出物価指数の財部門別に金融指標を組み合わせていくデータベースを構築することによって、金融制約が日本の輸出物価にどのような影響を与えるかについて分析していきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費の使用計画として、上記のデータベース構築・実証分析に必要なソフトウェアおよび書籍の購入、リサーチアシスタントに支払う謝金を考えている。
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