研究課題/領域番号 |
24730171
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
奴田原 健悟 専修大学, 経済学部, 准教授 (30553672)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | マクロ経済学 / 財政政策 / 資産価格 / 財政支出 / 不完全金融市場 |
研究概要 |
1、資産価格に反応する財政政策の理論分析:資産価格変動を考慮した財政政策の分析として本年度は、資産価格が低下したときに、景気刺激として財政支出を増加させるような政策を財政当局がとる場合を考えた。標準的なニューケインジアンモデルを用いて、数値計算や解析的な分析を行った結果、財政支出が資産価格変動に大きく反応する場合、均衡の非決定性(equilibrium indeterminacy)が生じる可能性があることを発見した。さらにこの結果は、賃金が粘着的なモデルや流動性制約に直面した家計が存在するモデルにおいても頑健であることを確認した。これは、財政支出が資産価格に反応することによって、インフレ率とアウトプットギャップの関係が変化してしまうだと解釈できることも示した。この結果は、実際の財政運営を行う上で資産価格変動を考慮することのマイナスポイントを示唆するものととらえることができる。また、以上の研究結果を論文にまとめている段階である。 2、DSGE モデルの財政政策に関する理論課題解決の試み:企業の運転資金が企業の保有する資産価値の一定割合までに制約されるような状態が財政政策の影響に影響しているのではないかという仮説を検討する。本年度は、具体的には借り入れ制約に直面しているモデルの構築を進めた。借り入れ制約には担保の種類、借り入れ返済のタイミングなど複数の種類が考えられるため、現在いくつかのモデルを構築して実験作業を進めている段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記研究実績の概要に示した通り、1、資産価格に反応する財政政策の理論分析、については結果を論文にまとめる段階にまで進んでいる。また、2、についてもほぼ計画通り進行している。
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今後の研究の推進方策 |
1、資産価格に反応する財政政策の理論分析:現段階の研究結果を論文にまとめ、国内外の研究会・学会などで報告して、様々な研究者から意見などをもらい、改定を進めていく。 2、DSGE モデルの財政政策に関する理論課題解決の試み:まず、一般的な実証結果によって得られている「財政支出によって消費が増加する」現象の説明を試みる。現在構築中の複数のモデルを使用して実験を行う予定である。結果が予想と異なる場合は、現在とは異なるタイプの市場の不完全性を考える可能性もある。また、加えてこの研究が進めば、財政予見の効果についての分析も進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
1、を論文にまとめる際の英文校正や、国内外の研究会・学会で報告する際の旅費、学術雑誌への査読投稿料などを支出する予定である。また、2、の研究では高度な数値計算が必要なため、数値計算用のソフトウェアやそのためのハードウェア整備などの支出も計画している。
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