研究課題/領域番号 |
24730175
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
井上 智洋 早稲田大学, 政治経済学術院, 助教 (90547093)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | DGEモデル / 信用創造 / ゼロ金利 / 流動性の罠 |
研究概要 |
「内生的貨幣供給」というサブテーマの研究を進め、市中銀行の信用創造機能を導入したニューケインジアンDGEモデルを構築し、論文にまとめた。このモデルにおいて、市中銀行は、企業の資本需要に応じて「預金貨幣」を創造し供給する。ただし、市中銀行には「法定準備率」と「ゼロ金利」という2つの制約が課されている。その結果、「プラス金利経済」と「ゼロ金利経済」という2つの異なった特徴を持つ経済状態が発生する。通常の経済であるプラス金利経済では預金増大率は預金準備増大率に等しくなる。その定常状態では、量的緩和政策により預金準備増大率を技術進歩率以上に保つことによって、デフレーションと負の産出ギャップを回避することができる。ゼロ金利経済では預金増大率は預金準備増大率の影響を全く受けなくなり、常に若干のマイナスとなる。その時、金利政策ばかりでなく量的緩和政策も効力を失う。このような経済状態を「信用創造の罠」と呼ぶことにする。それは「流動性の罠」とは異なる状態である。ゼロ金利経済の定常状態では、デフレーションと負の産出ギャップが発生する。つまり、持続的なデフレ不況が発生する。ただし、政府のボンドファイナンスによってマネーストックを増大させることで、デフレ不況からの脱却は可能である。このような論文の帰結に基づいて、私達は平成不況の原因とその脱却方法について議論することができる。すなわち、この不況からの脱却のためには、政府は赤字国債を増大させなければならない、ということが言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、「内生的技術進歩」「ゼロ金利制約」「内生的貨幣供給」という3つのサブテーマの内、前二者から先に取り組む予定だった。しかし、実際には先に「内生的貨幣供給」というテーマから取り組んだ。このテーマは難しいが進展したので、おおむね順調と言える。
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今後の研究の推進方策 |
「内生的技術進歩」「ゼロ金利制約」という二つのテーマについて研究を進めたい。日本での学会発表、及び海外での学会発表を行う。「内生的貨幣供給」というテーマの研究については、日本語の論文が完成しているので、それを英文に直して、海外ジャーナルへ投稿したい。また、海外での学会発表も7月に行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
日本及び海外での学会発表の旅費、英語論文の校閲費、マクロ動学理論に関する図書の購入等である。
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