研究課題/領域番号 |
24730177
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
赤星 立 早稲田大学, 理工学術院, 助手 (30609219)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | マッチング / 安定性 / 耐戦略性 / ゲーム理論 |
研究概要 |
本研究は、種々の資源配分メカニズムのなかでも、理論的観点及び現実社会における実用上の観点の双方において、近年急速に重要性を増している、マッチング・メカニズムの設計問題に関する研究を行うものである。マッチング・メカニズムの設計に際して本質的役割を担ってきた概念に、 メカニズムの「安定性」及び「耐戦略性」の2つがあるが、あらゆるマッチング問題を網羅したドメインでは、これらの2つを同時に満たすメカニズムの設計は不可能である事が知られている。しかし、マッチング問題全体ではなく、それよりも小さなドメインを考えれば、上述の2条件を満たすメカニズムを設計することができるかもしれない。そのために、本研究では、安定性と耐戦略性を満たすメカニズムが存在するドメインの必要十分条件を与えることを目的としている。 本年度に行った研究内容および、結果は次の通りである。(1)1対1マッチングと呼ばれるクラスの問題において、安定的かつ耐戦略的なメカニズムが存在する必要十分条件の条件を求めた論文を改定し、国際的な学術雑誌へ投稿した;(2)多対1マッチングというクラスの問題において、acyclicityという条件が、安定マッチングが一意的に定まるための十分条件であることを示した。 また、これらの論文を、国際学会や国内ワークショップで発表した。具体的には、上記の(1)の結果を、2012年7月にクイーンズランド大学で開催されたThe 12th SAET conference において、(2)の結果を、2013年3月に慶應大学で開催されたワークショップ (TCER-JWEN) において発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究において明らかにしたいことは、多対1マッチングと呼ばれるクラスの問題において、次の疑問に解答を与えることである。(1)メカニズムのドメインを制限することによって、安定的かつ耐戦略的なメカニズムが存在するようにすることはできるだろうか?;(2)もし可能ならば、ドメインにどのような条件を課せばいいのか?その条件は、安定的かつ耐戦略的なメカニズムが存在するための必要条件か、十分条件か、あるいは必要十分条件なのか?;(3)もし(1)の問題を肯定的に解決できるならば、そこで保証された安定的かつ耐戦略的なメカニズムは具体的にどのような形をしている(どのような関数として表される)のだろうか? 上記の疑問(1)は肯定的に解決されるので、多対1マッチング問題において安定的かつ耐戦略的なメカニズムが存在するための必要十分条件を与えることが本研究でなすべき課題となる。 これまでの研究において、1対1マッチングと呼ばれる、多対1マッチングのサブクラスの問題では、上記の3点に完全な解答を与えることができた。そこで提示されたNo Detour Conditionというドメインの条件に修正を加える事で、多対1マッチング問題において所望の条件を得たい。もちろん修正の仕方は様々なものが考えられるが、これまでに得られた条件は、必要条件であることは分かっている。ゆえに、残された期間でなすべきことは、十分性を証明するだけである。証明のテクニックなどは、1対1マッチング問題おいて使用したものが応用可能であるので、残された期間で目的を達成することは可能であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究は順調に推移している。これまでの蓄積をもとに残された課題を遂行することができると考えている。数学的に証明していく以外の方法はないので、特別な手段を用意することはできない。しかし、研究課題の解決の補助手段として、次のことを考えている。(1)研究に行き詰まった際にはコンピュータ・シミュレーションを活用する;(2)そもそも行き詰まる可能性を低下させるために、積極的に関連分野の一流の研究者たちと交流する。 研究が行き詰まった場合には、コンピュータ・シミュレーションを用い、多くの例を作る。これらをもとに帰納的に解決するための足がかりとすることがその狙いである。 また、これまで同様、関連分野の優れた研究者と積極的に交流をする。情報交換をすることで研究の効率性を上げ、研究が行き詰まる可能性を下げることができる。それだけでなく、仮に今後行き詰まるようなことになったとしても、得られた助言により、それを解決できる可能性を高めることができる。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度に支出を予定していたもののうち、(1)コンピュータの購入費用と(2)1回の海外研究出張費用が次年度に回されることになった。その理由は、それぞれ次の通りである。(1)コンピュータ・シミュレーションは、研究が行き詰まった際に用いると想定している。初年度はそのような事態は生じなかったので、購入は控えた。今年度にそうした手段を用いる場合には、改めて購入する。(2)3月に海外の大学を研究訪問する予定であった。しかし、訪問する予定であった相手の都合もあり延期することになった。改めて7月にお会いすることになっている。
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