研究概要 |
マッチング・メカニズム設計問題において中心的役割を果たしてきたのは、「安定性」と「耐戦略性」と呼ばれる性質である。しかし、メカニズムのドメインとしてあらゆる選好プロファイルが含まれる場合、これら2つを同時に満たすようなメカニズムは設計不可能であることが知られている。これを受けて本研究では次の2つの研究を行った:(1)ドメインとしてあらゆる選好プロファイルを考えることは、必ずしも現実的ではないかもしれない。では、各プレイヤーの選好集合がどのようなものであれば、安定性と耐戦略性の2つの性質を満たすメカニズムが存在するのであろうか。これを知るために、1対1マッチングと呼ばれるクラスの問題(結婚問題)において、片側のプレイヤー(結婚問題に即して言えば、男性または女性の一方)の選好集合が制限されている環境を考察した。No-Detour Condition という、選好が制限されている側のプレイヤーたちの選好集合についての条件を提示し、これが所望のメカニズムが存在するための必要十分条件であることを示した。(2)Sonmez (1996, Econ. Design) は、多対1マッチング問題(大学入学者選抜問題)で、各大学の選好にseparabilityという性質を仮定したとき、各大学の持つ定員が一定数以上であれば、どのような選好組に対しても安定マッチングが一意的であり、また(唯一の)安定メカニズムが耐戦略的であることを示した。これを受けて本研究では、多対1マッチング問題で、安定マッチングが一意的であるための必要十分条件について考察した。本研究では、大学側の選好に感応性という仮定をおいた伝統的なモデルを考察し、2つのタイプの必要十分条件を提示した。1つ目は、大学側(または学生側)のプレイヤーの選好組についての条件であり、2つ目は、大学の定員ベクトルについての条件である。
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