研究課題/領域番号 |
24730179
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研究機関 | 国際大学 |
研究代表者 |
宮本 弘暁 国際大学, 国際関係学研究科, 教授 (10348831)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | マクロ経済学 / 雇用 / 失業変動 / 景気循環 / サーチ理論 |
研究概要 |
本研究の目的は景気循環上の雇用・失業変動を実証分析により明らかにし、その背後にあるメカニズムを労働市場のマクロ分析を行う際の標準的な枠組みであるサーチ・マッチングモデルを用いて理論的、数量的に体系的に分析することである。これまでに日本および米国の労働市場の循環的特性を実証的に分析するため、両国における労働力フローデータの収集・整理を行った。また、「失業変動の流入・流出分析」の手法を用いて、両国において長期における失業変動が離職率および就業率によって説明されることを明らかにした。この研究結果は"The Ins and Outs of the Long-Run Unemployment Dynamics" という論文として海外学術雑誌Applied Economics Lettersに掲載された。 また、景気循環上の雇用変動を分析するにあたり、雇用者数の変動のみならず、労働時間の変動にも注目して実証分析を行った。雇用量は労働者数と労働時間によって決定されるが、これまで雇用・失業変動を分析した研究では、雇用者数の変動が重要視され、労働時間の変動にはそれほど注目が集まってこなかった。実際に、米国では景気循環上の雇用変動の多くが雇用者数の変動によって説明されることがよく知られている。当該研究では、日本における景気循環上の雇用変動を雇用者数のみならず労働時間の変化に注目して分析を行った。その結果、日本では雇用変動の大部分が労働時間の変動によって説明されることが明らかにされた。この成果は"Extensive vs. intensive margin in Japan"として論文にまとめ、現在、査読付き学術雑誌に投稿する準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は主に景気循環上において労働市場のマクロ変数である失業率、欠員率の動きについて実証研究を行い労働市場の循環変動に関するファクトを整理することを目指した。失業変動は失業プールへの流入および流出によって決定されるため、景気循環上の労働市場の特性と分析する際には労働力フローを考慮に入れることは不可欠である。欧州諸国においては失業変動のメカニズムをその背後にある失業への流入および失業からの流出の変化に注目して分析がなされている(「失業変動の流入・流出分析」と呼ばれる)が、日本の労働市場においてにまだ研究蓄積が少ない。そこで、平成24年度は日本における労働力フローデータの収集および整理を行った。これらの研究成果の一部は"The Ins and Outs of the Long-Run Unemployment Dynamics" という論文として海外学術雑誌Applied Economics Lettersに掲載されるなど、当初の計画にそった形で研究は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでに実証分析を行い明らかにされた景気循環上における労働市場のマクロ変数である失業率、欠員率の動きに関する事実の背後にあるメカニズムをサーチ・マッチング理論を用いて分析する予定である。その際に、定性的な分析のみならずカリブレーションおよびシミュレーションによる定量的な分析を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
かなり複雑なプログラムによる莫大な計算を要するため、既存コンピュータの大幅なバージョンアップ、あるいは更新が必要である。研究費の一部は研究環境の整備を行う為に使用する予定である。また、これまでの研究成果や今後、執筆予定の論文を国内学で発表するために、出張費として使用する予定である。さらに、国内はもちろん、特に海外での意見交流の機会は当該研究において必要不可欠と考える。それゆえ、研究費の一部はそのための出張費として使用する予定である。
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