研究課題
本研究の目的は、少子高齢化を迎えた我が国が、安定した経済成長を維持するための資源配分政策を理論的に明らかにすることである。政府が、(景気対策等のために)支出を増加させる場合、その配分をめぐって企業がレントシーキング活動を行うことが想定される。この行動により、資源配分に歪みが生じ、本来市場から退出すべき低生産性企業が存続する可能性がある。つまり、政府支出の増加は、産業の交替(企業の参入・退出)という市場の自然淘汰機能が阻害し、却って経済厚生を低下させる可能性がある。しかしながら、低生産性企業の存続によって雇用が確保され、所得が増加するならば、経済厚生は上昇するであろう。本研究では、企業のレントシーキング活動を導入した経済理論モデルを構築することで、政府支出の増加が経済厚生を増加あるいは低下させるのか、そのメカニズムを明らかにする。さらに、経済厚生を増加させる補助金額の水準などについて、数値計算により現実妥当性を検証する。最終年度である本年度は、開放経済において政府が自由貿易を促進する際に、補助金政策を行うことを想定し、この政策が経済厚生にどのような影響を及ぼすのかについて検討した。補助金は、各企業のレントシーキング活動に対する努力水準に応じて配分されると想定する。この下で、企業への補助金政策が、企業の生産性・雇用の変化を通じて経済厚生にどのような影響を与えるのかについて明らかにした。また、厚生を最大にする補助金額が存在すること、厚生を高めるための所得税・消費税の組み合わせを数値例により示した。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)
Working Paper Series, Economic Society of Kansai University
巻: F-86 ページ: 1-15