平成24年度は高田保馬の人口思想への関心を高めるため、研究会を開催して自身の研究成果の報告を行い、また海外および国内の学会やワークショップで研究成果を発表して他研究者の意見を参考にすることに力を注いだ。 平成25年度は以上のような平成24年度の研究成果をまとめる作業に入り、また高田保馬の人口に関係する研究および現代の人口問題の理解を深めるため関係する文献を購入したり、高田の資料を多く保存している佐賀県立図書館等を訪問するなどして資料収集を行った。 研究の結果明らかになったのは以下のような内容である。高田の人口問題に関する思想は一貫して人口の量を重視するものである。社会の物理的・経済的な人口許容量は短期的には限られているため、人口が増加していけば生活水準を上げることは難しくなっていく。その一方で人間の持つ「力の欲望」により、人々は他人に負けない程度の生活水準を維持しようとするため生活水準を低下させようとしない(こうした高田の発想にはヴェブレンの競争概念であるemulationが影響している)。生活水準と人口数が人口許容量の限界に達すれば、否応なく物理的・経済的人口許容量を拡大するための技術革新が行われ経済は発展していく。このように人口の連続的な増加が経済の断続的な成長を促していくとするのが高田の人口史観の特徴である。こうした考えからすれば人々が生活水準を維持しようとして子どもの数を減らしていくことは技術革新および経済成長を停滞させ好ましくないことになる。 こうした2年間の研究成果についてやや一般向けの単著の形でまとめることを考え、平成25年度はその執筆を続けたが、諸事情により執筆が大幅に遅れ、残念ながら平成25年度中に刊行することはできなかった。平成26年度中の刊行を目指して現在執筆を続けている。
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