本研究課題の3年目となる本年度は、初年度と昨年度に引き続き、完全リスクシェアリング仮説から導かれる命題の一つである、消費の限界効用の成長率が家計または個人間で均等化される、という命題を実証的に検討した。研究計画では以下を予定していた。1.DRRA (Decreasing Relative Risk Aversion)を許容する効用関数をもとに推定式を導出する。2.Blundell等によって提案された手続きに従って、消費支出および推定に必要な変数のデータセットを作成する。3.Zhang and Ogakiによって提案された完全リスクシェアリング仮説の検定方法および推定方法を拡張する。4.拡張した枠組みをもとに完全リスクシェアリング仮説の実証分析を行う。1については、昨年度までに対数表示の推定式を導出したが、その妥当性を引き続き精査した。2については、昨年度までに既に米国の個票データを検討した。3については、アンバランス・パネルへの拡張可能性を検討した。4については、米国データへ適用を行った結果、パラメータが不安定に推定され、ロバストな結果は期待できないという結論に至った。本年度は、以上の当初の予定に加えて、完全リスクシェアリング仮説が依拠するモデルの前提を離れて、選好の異質性を再評価することを試みた。具体的には、モデル不確実性を考慮した場合の選好パラメータの評価方法を検討した。
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