研究課題/領域番号 |
24730191
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
松下 幸敏 筑波大学, 人文社会系, 助教 (50593589)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 統計的推測 / 経験尤度 |
研究概要 |
まず、モーメント制約モデルにおいて、経験尤度法によるモデルの識別検定がいわゆる「Bartlett補正」可能であることを示した論文がEconometric Theoryに掲載決定した。(``Second-order Refinement of Empirical Likelihood for Testing Moment Restrictions’’ with Taisuke Otsu) また、いくつかのノンパラ・セミパラメトリック計量経済モデルの新たな統計的推測法を提案し、論文にまとめた。第一に、近年の計量経済分析において因果関係を測る重要な手法となってきているRegression Discontinuity design (回帰分断デザイン)において経験尤度法を用いた統計的推測を提案し、漸近展開によってその性質の良さを示した(``Empirical likelihood for Regression Discontinuity Design’’ with Taisuke Ostu and Ke-Li Xu)。第二に、所得などの密度関数にジャンプがあるかどうかについての統計的推測方法を提案し、やはり漸近展開により、その性質について議論した。(``Estimation and Inference of Discontinuity of Density’’ with Taisuke Otsu and Ke-Li Xu)。最後に、内生変数を含むVarying-coefficient model(可変係数モデル)の一般化積率法を用いた推定法を提案し、そのバイアスについて検討した。(``Semi-local GMM estimation for semiparametric varying-coefficient instrumental variable models’’)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、非線形モーメント制約モデルについての統計的推測に関する論文が、Econometric Thoeryに受理された。 また、3つのノンパラ・セミパラメトリックモデルの新たな統計的推測法を提案した。これらの研究により、ノンパラ・セミパラメトリックモデルにおいても、信頼性の高い統計的推測ができることが示された。また、ノンパラ・セミパラメトリックモデルの統計的推測について、パラメトリックモデルの場合との共通点と相違点のそれぞれが少しずつ明らかになってきており、次年度、別のモデルにおける推測方法の提案や、その一般化、さらに精緻化への応用ができると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
第一に、今年度執筆した論文の精緻化を行う。具体的には、提案した方法の有限標本性質を検討する。また、必要な場合にはさらにその改良を行う。特に、セミパラ・ノンパラメトリックモデル推測において重要なバンド幅の選択法について検討する。特に、経験尤度法は推定誤差の推定の必要がないため、バンド幅に対してロバストな推測をすることが可能である場合があることがわかってきている。その点についても検討を加える。 第二に、さらに別のモデル(セミパラメトリック選択モデル、分位点回帰モデル等)の統計的推測法について考える。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度、研究打ち合わせのために海外(アメリカ)に行くことを考えていたが、共同研究者とのインターネット通話による事前打ち合わせの結果、それを来年度に持越しすることとなった。 また、提案した統計的推測法の有限標本性質を調べるために、新たに大規模なシミュレーション実験が必要となったため、新たなコンピュータと数値計算ソフトの購入を考えている。
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