最終年度は、主に3つの研究課題に取り組んだ。第一に、Otsu氏とXu氏との共著論文である”Empirical Likelihood for Regression Discontinuity Design”の執筆・改訂に取り組み、Journal of Econometricsに掲載が決定した。具体的には、近年の計量分析において重要な分析デザインの一つとなっている回帰分断デザインにおいて、経験尤度法を用いた新たな統計的推測法を提案し、漸近理論によってその理論的性質の良さを示した。また、高次の漸近理論を用いることによって、提案した推測手法をさらに改良することが可能であることを示し、従来の方法に対する優越性を証明した。 第二に、平均処置効果 (Average Treatment Effect) のセミパラメトリック推定において、経験尤度法を用いた新しい統計的推測法を提案した。この手法は、従来の手法では避けることができなかったアドホックな修正なしに統計的推測を行えることに加え、理論及び数値実験の両方において良い性質を持つことを示した。 第三に、Otsu氏とCamponovo氏と共同研究を行い、実現ボラティリティの推定においてノンパラメトリック尤度を用いた新しい統計的推測法を提案した。また、高次漸近理論によりその理論的正当性を示した。 以上、ノンパラ・セミパラメトリック計量経済モデルにおいて、いくつかの新たな統計的推測法の開発とその性質を検討した。
|