研究課題/領域番号 |
24730193
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
白石 博 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (90454024)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 国際情報交換 / 多国籍 |
研究概要 |
本年度は、Lassoタイプの推定量の漸近的性質についての調査を行った。Knight and Fu(2000)は、独立な誤差項をもつ線形回帰モデルにおけるLassoタイプの回帰係数の推定量の漸近分布を表している。しかし、この漸近分布は、ある関数の最小化解としてしか表現されておらず、このままでは漸近最適性の議論ができない。したがって、ある正則条件の下で、この漸近分布を明示的に表現することを試みた。KKT条件を用いれば、この漸近分布を表す確率ベクトルは、「バイアスがあるが分散は小さくなる確率ベクトル」と「バイアスは無いが分散は大きくなる確率ベクトル」に分解されることが分かった。共変量が確率変数ではなく、かつ漸近的に正則の場合、罰則項を付与しない(つまり最小二乗法による)推定量が(漸近最小二乗誤差を最小にするという意味で)漸近最適となってしまい、Lassoの有効性が消えてしまうとう事が分かった。この結果は、最小二乗推定量が正則条件の下では漸近有効になる事実と合致するため、当然であると思われる。今後は、Knight and Fu(2000)でも考えられている共変量が漸近的に非正則となる場合を考えたい。特に、本研究の主目的である高次元データにおいては、共変量が漸近的に非正則となることが予想される。高次元データにおけるLassoタイプの推定量の漸近理論は、Huang, Horowitz and Ma(2008)などで展開されており、今後も調査を続けたい。また、また、Lassoタイプの推定量は、最小二乗法における目的関数にL1タイプの罰則項を付与した目的関数を最小化する推定量であるが、罰則項の大きさを表すLassoパラメータによって、上記の漸近分布は変化する。Lassoパラメータの決定は、モデル選択と密接に繋がっていることが予想される。このことについても、調査を続けたい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
特に、統計的観点からLassoについての理論的調査に多くの時間を費やしてしまったため、経済分野における高次元データ解析の必要性や解析方法についての調査が不十分となってしまった。 今後は、統計分野・経済分野両方から、調査を続けたい。
|
今後の研究の推進方策 |
翌年度も先行研究の調査を中心に研究を進める。 統計的観点からは、高次元データにおける罰則付M推定量(Lassoタイプの推定量を含む)の漸近的性質についての調査を行う。特に、共変量が漸近的に非正則となる場合や、誤差項に時間従属性がある場合など、現時点で達成されている結果を収集する。 経済的観点からは、高次元データにおけるポートフォリオ選択問題がどのように展開されているか、その解析方法および問題点についての調査を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
Lasso, M-Estimation, Empirical Process などの統計に関する書籍、Portfolio, Factor Analysis などの主に経済に関する書籍、Survival Analysis などの医学統計に関する書籍を購入する。 また、日本国内外の研究者との情報交換・学会等参加のための旅費として使用する。 また、高次元データに関する統計解析のため、PC・ソフトを購入する。
|