研究課題/領域番号 |
24730193
|
研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
白石 博 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (90454024)
|
キーワード | PCA / 高次元データ |
研究概要 |
本年度は、昨年度に引き続き、主に先行文献の調査を行った。高次元データを扱う文献の内、ポートフォリオの統計的推測論に関する論文としてKaroui(2010)がある。この論文では、平均分散最適ポートフォリオの“有効フロンティア”を推定する際、(標本数・次元数ともに無限大に発散するような)高次元設定では漸近的にバイアスが生じることを述べ、その漸近バイアスを補正する手法を提案している。この論文では、データがIID正規の場合と、IIDで楕円型分布の場合を扱っているため、今後は時系列モデルへの拡張を試みたい。また、一致性・漸近正規性・漸近有効性の議論について、当論文の十分な理解と共に、必要ならば新たな理論の構築を試みたい。 また、ポートフォリオ理論では、いくつかの種類のファクターモデルを仮定して最適ポートフォリオを構成するが、このファクターモデルにおける統計的推測論について、高次元データの解析が多くの文献で発表されている。ファクターモデルでは説明変数が観測されている場合と観測されていない場合とで統計的解析方法が異なる。一般に、前者の場合は昨年度研究したLassoのような回帰分析が行われるが、後者の場合(static factor modelなどと呼ばれている)は主成分分析(principal component analysis, PCA)が行われる。Hallin and Lippi(2013)は、時間に従属性のあるファクターモデル(general dynamic factor model)についてもPCAが有効であることを示しており、この結果をポートフォリオの統計的推測論に適用することを今後試みたい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
近年、高次元データに関する研究が各所で行われており、先行文献の調査に予定以上の時間がかかっていることが現時点での達成度の遅れの原因と思われる。
|
今後の研究の推進方策 |
昨年度および本年度で、現時点での当分野(高次元データの統計的推測論)の最先端の研究内容の多くの部分が判明したと思われる。今後は、主要論文の内容を注意深く理解し、ポートフォリオ理論への適用を試みたい。ただし、前述の通り、この分野の研究は各所で行われているため、先行文献の調査は引き続き行いたい。
|
次年度の研究費の使用計画 |
主に先行文献の調査に従事したため、計算機等の購入機会が遅れた。また、新たな結果の発表や、研究内容についての専門家との議論を考えているが、研究の進行が遅れているため、まだそのような段階ではない。 先行文献の調査を早急に進めるとともに、新たな結果の開発およびこの分野における専門家との議論を行いたい。また、計算機等を購入して数値的な解析も同時に行いたい。
|