本研究では、「プラットフォーム」型の流通業者に着目し、プラットフォーム間の競争や、プラットフォーム市場への参入と、上流企業とプラットフォーム、または、下流企業および消費者とプラットフォームとの間の垂直的な契約との関係について、実際の判例を調査したうえで、経済理論による整理を行った。 平成24年度においては、垂直的契約の実例と判例の調査に注力、実態を把握し現状の問題点を明らかにした。この作業の中で、特に2009年に排除措置命令が出されたJASRAC事件が、プラットフォーム型流通業者という本研究課題の視点から非常に興味深いものであることが分かった。そこでこの事件について、経済学的な視点からのケーススタディを執筆し、当該判例の解釈や今後の同様の事件への示唆を導いた。この分析については、首都大学東京、北海道大学において研究会報告を行い、「新世代法政策学研究」において公表した。当該事件での裁判が継続していることもあり、法学者や弁護士からの反響を多く得られた。 平成25年度においては、上記ケーススタディを経済理論論文に発展させることに主に注力した。プラットフォーム間の競争が存在する状況において、定額課金と単価とで競争力に違いが出るか、また、どのような場合に参入が阻止されるのかについて明らかにした。この論文については、日本応用経済学会での報告に加え、大阪大学、京都大学において研究会報告を行い、経済学者、経済法学者らからインプットを受け、現在英文査読付雑誌への投稿に向けた最終的な作業を行っており、ここから派生した理論論文2本について分析、執筆に着手している。 以上に加えて、本研究を行った2年間において、学会や研究会参加により、競争政策の経済分析の分野における国内外の研究者と意見交換を行うことができ、議論を行える関係を築けたことは、今後の研究の継続に大きな意味を持つと考えている。
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