研究課題/領域番号 |
24730197
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
須賀 宣仁 北海道大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (70431377)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 産業集積 / マーシャル流外部経済 / 国際分業 / 独占的競争 / クールノー寡占 / 国際情報交換 |
研究概要 |
平成24年度は、本研究で用いる基本モデルを構築し、市場統合の進展が産業立地に与える効果と市場均衡の効率性について分析を行った。本研究の目的は、産業集積にともなうマーシャル流外部経済が国際分業の在り方や各国経済に与える効果を分析することである。上記の基本モデルでは、マーシャル流外部経済のミクロ的基礎付けとして、不完全競争下の投入産出連関を想定している。 本研究では、その分析目的に応じて二つの異なる基本モデルを展開している。これらモデルの大きな違いは上流部門の市場構造にある。一つは差別化財を生産する独占的競争型の中間財部門、もう一つは複数の同質財を生産するクールノー寡占型の中間財部門を想定している。 独占的競争型の中間財部門をともなうモデルでは、中間財輸送費の低下がグローバルな産業立地パターンに与える効果について分析を行った。本分析は、すべての工業生産が一国に集積した状態を分析の出発点として、上流と下流の各部門の立地が中間財輸送費の低下とともにどのように変化するかを考察したものである。この分析結果は、近年の先進国・途上国間の貿易パターンの変化とそのメカニズムを理論的に解明するものであり、本年度の重要な研究成果の一つである。 クールノー寡占型の中間財部門をともなうモデルでは、貿易均衡における中間財部門の企業数が社会厚生の観点からどのように評価されるかを分析した。鉄鋼、石油化学製品、半導体など、寡占市場で生産され、かつ、中間財に分類される財には同質的なものが多い。ゆえに、本分析は経済の現実的な側面を上手く捉えており、重要な政策的含意をもつといえる。また、この分析結果は、従来の寡占理論で知られる過剰参入定理の結果とは一線を画するものであり、その学術的意義は高いと考えられる。 以上のように、本年度は基本モデルの構築とその基本的性質についての分析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題の現在までの達成度は十分とは言い難い。その理由としては、研究計画の立て方、研究の遂行方法、共同研究者との連携のあり方にそれぞれ問題があったことがあげられる。 現在までの達成度が当初の目標を下回る理由の一つとして、研究計画の作成段階において各研究工程への時間配分が十分に練られていなかった点があげられる。各研究工程をその作業量や作業性質を勘案した上で本研究以外のすべての業務を含む年間スケジュールの中に適切に組み込むことができなかったことが、研究の遂行に大きな非効率性を生じさせたと考えられる。 また、異なる二つの研究を同時に進めたことも、全体として十分な達成度を実現できなかった理由としてあげられる。本年度は、市場統合が国際分業に与える効果と開放経済における自由参入均衡の効率性について、異なるモデルを用いてそれぞれ個別に分析を行った。これらはどちらも本研究課題で設定される研究領域に含まれるものであるが、問題意識の異なる二つの研究を同時に遂行したという側面があることも否定できない。一定期間内に成果を求められる場合にはテーマを一つに絞り込むべきであろうが、本年度は上記の二つのテーマにエフォート・レベルを分散させた結果、全体としての達成度が不十分なものになったと考えられる。 最後に、共同研究者との連携が上手くいかなかったことが理由としてあげられる。スケジュールのすり合せが十分ではなく、チーム全体として効率的に研究を遂行できなかったことが不十分なパフォーマンスにつながったと考えられる。 以上のように、本研究の現在までの達成度が不十分な理由としては、研究計画の立て方、研究の遂行方法、共同研究者との連携の在り方にそれぞれ問題があったことがあげられる。
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今後の研究の推進方策 |
各研究工程を年間スケジュールの中に適切に組み込むとともに、平成25年度研究実施計画を現在の進捗状況に合わせたものに変更する。平成24年度研究実施計画書における研究活動の実施期間を平成25年12月まで延長し、当初予定されていた平成25年度の研究活動の開始時期を10月に変更する。さらに、理論分析や論文執筆などの作業を主に長期休業期間などの比較的まとまった時間が確保できる時期に割り当てる。 平成25年度は、前年度に引き続き国際的な市場統合の進展の効果についての研究に従事する。4月から5月までは、理論分析において残された課題(国際的な市場統合の進展が各国の所得分配や経済厚生に与える効果の分析)に重点的に取り組む。6月から7月までは、前年度不十分であった先行研究のサーベイを中心に行う。8月から9月までは、主として論文執筆に取り組む。11月から12月までは、学会・研究会等において研究成果を発表し、その後、学術誌に論文を投稿する。 また、10月からは、上記と並行して、平成25年度研究実施計画において当初予定されていたテーマ(各国の関税政策が国際的な市場統合の進展とその効果に与える影響)についての研究を開始する。10月から1月までは先行研究のサーベイ、2月から3月までは理論分析を中心に作業を進める予定である。 以上のように、平成25年度は、各研究工程を年間スケジュールの中に適切に組み込むとともに当初の研究実施計画を現在の進捗状況に合わせたものに変更し、より確実な研究成果を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし。
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