研究課題/領域番号 |
24730197
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
須賀 宣仁 北海道大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (70431377)
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キーワード | 生産技術の国際的格差 / 独占的競争 / 貿易自由化 / 産業立地 / 貿易利益 |
研究概要 |
平成25年度は、生産技術の国際的格差を伴う独占的競争型貿易モデルにおいて、貿易自由化が産業の立地パターンや各国の経済厚生に与える効果について分析を行った。本研究の新規性は、同様のモデルに基づく従来の研究には見られない次の二つの分析にある。一つは、各消費財部門への家計の支出シェアが価格とともに変化する状況を想定し、このような支出シェアの可変性が均衡の安定性や貿易利益に与える影響について考察したことである。もう一つは、対外的に開放された部門と閉鎖された部門が併存する状況(以下、半閉鎖経済)を出発点とし、そこから自由貿易体制への移行が各国の経済厚生に与える効果を明らかにしたことである。 本研究では、支出シェアの可変性が均衡の安定性に決定的な影響を及ぼすとともに、半閉鎖経済から自由貿易への移行に伴う各国の経済厚生の変化も支出シェアの可変性に大きく依存することが示された。より具体的には以下の通りである。均衡が安定的であるためには、各部門への支出シェアの可変性が各部門における個々の製品への支出シェアの可変性よりも小さくなければならない。このような安定条件のもとで、自由貿易下の産業立地パターンは古典的な比較優位の原理に基づいて決まり、閉鎖経済から自由貿易への移行はすべての国の経済厚生を改善させる。一方、半閉鎖経済と比較した場合、自由貿易は常にすべての国にとって望ましいわけではない。各部門への支出シェアが価格変化に対して弾力的に反応する場合、国によっては半閉鎖経済から自由貿易への移行により経済厚生が悪化する可能性が示される。 以上のように、本研究では、可変的な支出シェアを伴う家計の需要行動を想定し、それが均衡の安定性に与える影響と半閉鎖経済から自由貿易への移行に伴う経済厚生の悪化の可能性を明らかにした。これらは従来にはない新しい視点からの分析であり、その学術的意義は高いと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究課題の現在までの達成度は十分とは言い難い。その理由としては、平成25年度の研究テーマに変更が生じたこと、さらにその原因として共同研究者との連携のあり方や研究の遂行方法に問題があったことがあげられる。 平成25年度は、前年度からもち越された研究テーマと平成25年度研究実施計画で設定された研究テーマに取り組む予定であった。しかし、本報告書の研究実績欄で述べた研究は、本研究課題が想定する研究領域には含まれるものの、当該年度の初めに計画した上記の研究テーマとは内容が大きく異なる。ゆえに、研究実施計画に基づく本来の到達目標からすれば、本研究課題の現在までの達成度は低いと言える。ただし、変更後の研究テーマについて言えば、当該年度は十分な達成度を実現していると言える。 このように研究テーマの変更が生じた理由としては、前年度と同様に、共同研究者との連携が十分でなかったことや異なる二つの研究を同時に進めたことがある。前年度からもち越された研究テーマについては、既に主要な分析結果は出ており、論文作成と研究成果の発表が次に取り組むべき作業である。しかし、共同研究者との作業分担の在り方の問題から研究の遂行に支障をきたす場面が多々あり、論文作成段階以後の作業が完全に滞っているのが現状である。その間、本報告書の研究実績欄で述べた研究も同時に進めており、上記のような状況のもとで前年度からもち越された研究テーマに充てるエフォート・レベルが次第に低下し、結果的として同時に進めていたもう一つの研究が当該年度の主要な研究成果となった。 以上のように、本研究課題の現在までの達成度が十分でない理由としては、共同研究者との連携の在り方や研究の遂行方法に問題があったこと、さらにその結果として平成25年度の研究テーマに変更が生じたことがあげられる。
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今後の研究の推進方策 |
各研究工程を年間スケジュールの中に適切に組み込むとともに、平成26年度研究実施計画を現在の進捗状況に合わせたものに変更する。本研究課題申請時における平成25年度と平成26年度の研究実施計画を白紙に戻し、平成26年4月から12月までは、前年度に引き続き、本報告書の研究実績欄で述べた研究に従事する。平成26年7月から平成27年3月までの期間は、平成24年度研究実施計画の研究活動のうち未実施のものに従事する。さらに、論文作成に係わる作業を長期休業期間などの比較的まとまった時間が確保できる時期に割り当てる。 平成26年4月から11月までは、前年度に引き続き、生産技術の国際的格差を伴う独占的競争型貿易モデルの研究に従事する。4月から7月までは、理論分析において残された課題に重点的に取り組む。8月から9月までは、前年度不十分であった先行研究のサーベイと論文作成に係わる作業を中心に行う。10月から12月までは、学会・研究会等において研究成果を発表する。さらに、同期間に必要に応じて論文に修正を加え、学術誌に論文を投稿する。 また、上記の作業と並行して7月からは、上流・下流企業間の相互作用と産業立地パターンの研究(平成24年度研究実施計画における研究テーマ)に従事する。7月は、理論分析において残された課題に重点的に取り組む。8月から9月までは、先行研究のサーベイと論文作成に係わる作業を中心に行う。10月から12月までは、学会・研究会等において研究成果を発表し、そこでのコメントを踏まえて論文に修正を加える。最後に、平成27年1月から3月までの期間に必要に応じてさらに論文に修正を加え、学術誌に論文を投稿する。 以上のように、平成26年度は、各研究工程を年間スケジュールの中に適切に組み込むとともに当初の研究実施計画を現在の進捗状況に合わせたものに変更し、より確実な研究成果を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じた理由は、研究費を年度末に使用したことにより、これに係る会計処理が次年度の4月以降に行われたことにある。なお、この研究費使用に係る出張報告と購入物品の納入は平成26年3月末日までに完了している。 上記の次年度使用額の内訳は次の通りである:研究成果報告に係る出張旅費117,400円(用務先:広島修道大学(広島市)、出張年月日:2018年3月17日~19日);消耗品購入44,837円(ソフトフェア(2)、USBメモリ(2)、マウス(1))。
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