本研究では、国際的な市場統合の進展が産業立地や資源配分、所得分配、経済厚生に及ぼす影響を理論的に明らかにした。本研究の主要な成果は次の通りである。(1)小国開放経済では域内に中間財を供給する寡占企業の数が社会的効率性の観点から過少になる可能性があることが示された。(2)中間財部門における市場統合の進展は、工業生産を先進国から途上国へシフトさせるだけでなく、途上国へシフトした中間財生産の一部を先進国に回帰させる効果をもつことが示された。(3)消費者の財に対する多様性選好と支出シェアの(価格に対する)可変性のもとでは、貿易自由化により経済厚生が悪化する可能性があることが示された。
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