研究課題/領域番号 |
24730199
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
上山 一 筑波大学, 北アフリカ研究センター, 研究員 (80626226)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 国際情報交換 / バハレーン / サウジアラビア |
研究概要 |
当該年度は、GCC諸国に展開するイスラム銀行の費用構造を、財務分析・比較分析および計量分析によって明らかにした。具体的には、GCC諸国に展開するイスラム銀行の財務データを用いて、サンプルを資産規模別に分け、当該諸国のイスラム銀行部門が市場環境の変化に対してどう対応したかを財務分析・比較分析によって明らかにした。そして、同財務データから作成されたパネルデータを用いて、イスラム銀行の費用関数を推計し、規模の経済性と範囲の経済性を計測することで、イスラム銀行部門の費用構造を考察した。さらに、2008年中盤以降の国際金融危機がイスラム銀行の費用に与えた影響を評価した。 これら分析から、以下のような結果・成果が得られた。第一に、財務分析・比較分析の結果より、経営規模において優位であった上位行が規模の経済を活かして、固定資産や設備の拡充を積極的に進めた結果、労働投入の面でより生産的な経営を行っていることが明らかとなった。第二に、計量分析の結果より、GCC諸国のイスラム銀行部門は固定資産や設備の拡充による経営資源の拡大に対して積極的であったものの、依然として経営規模が小さいことから、規模の経済性を観察することができず、また、範囲の経済性についてもイスラム銀行が主にイスラム金融手法による資金運用に特化したことから、その存在が確認されなかった。そして、国際金融危機がイスラム銀行の費用に与えた影響については、イスラム銀行部門への負の影響は、2010年に入り、より顕著に現れたことが明らかとなった。 以上の研究成果は、GCC諸国におけるイスラム銀行の経営実態(規模の経済性および範囲の経済性の有無に関する分析成果から)を明らかにしていることに加えて、その外部環境の変化に対する脆弱性(国際金融危機に関する分析成果から)をも明らかにしてる点で、既存研究に対する貢献は大きいと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
エジプトおよびヨルダンのイスラム銀行部門に関する財務分析・比較分析および計量分析については、対象国のイスラム銀行に関するデータを収集することができなかったことに加えて、当該国での調査を実施することができなかったため、分析を進めることができなかった。 GCC諸国のイスラム銀行を対象とした、リスク管理、資産選択、企業統治といったイスラム銀行の行動に関する聞き取り調査・質問票調査については、聞き取りおよび質問票項目の設定作業が進まなかったため、当該国で調査を実施し、分析を行うことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、研究目的の達成のために速やかに現地調査を実施し、イスラム銀行に関するミクロデータの入手を急ぐと同時にデータの加工・分析作業を進めて行く予定である。具体的には、エジプトおよびヨルダンに展開するイスラム銀行の費用・収益構造に関する財務データの入手・分析作業に加えて、GCC諸国に展開するイスラム銀行を対象としたリスク管理、資産選択、企業統治といったイスラム銀行の行動に関する聞き取り調査・質問票調査をバハレーン戦略国際エネルギー研究センター(旧バハレーン調査研究センター)の協力を得ることによって効率的に進める。 研究を遂行する上での課題については、聞き取り調査・質問票調査によって得られるデータ数が過少であることが挙げられる。このため、複数の外国研究機関との協力を通じて、可能な限り、データ数の増加に努める。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該研究費が生じる理由は、本研究が質問票による調査および聞き取り調査に基づいているためであり、また、調査内容に関して、現地の協力機関との協議も必要になるからである。翌年以降も同様の理由から、海外旅費および滞在費を中心に研究費を請求することが見込まれる。
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