研究課題/領域番号 |
24730199
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
上山 一 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 助教 (80626226)
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キーワード | イスラム銀行 / 銀行の行動 / GCC諸国 / サウジアラビア / バハレーン |
研究概要 |
当該年度は、GCC諸国に展開するイスラム銀行の経営実態について解析を行った。具体的には、GCC諸国に展開するイスラム銀行(イスラム銀行部門を持つ金融機関を含む)のリスク管理や資産選択といった銀行の行動に着目し、聞き取り調査を行い、その実態を検討した。とりわけ、イスラム金融において、その利用が望ましいと考えられているムダーラバといった利益配当型の金融契約による資金運用(資産選択)に関わる情報の非対称性への対応について考察を行った。 これら考察から、以下のような結果が明らかとなった。第一に、イスラム銀行による資金運用の実態は、イスラム金融のもとで許されている商品売買契約やリース契約といった、いわゆる「もの」が介在した契約による資金運用が全資金運用額の相当な割合(8割以上)を占めており、イスラム銀行において、利益配当型の金融契約による資金運用が低調であることである。聞き取り調査の結果から、こうした実態の背景には、取引費用の問題、リスク負担に関わる問題、イスラム銀行に対する規制の問題、そして経営者への規律づけと市場インフラに関わる問題が関係しており、結果として、イスラム銀行は資金運用において利益配当型の金融契約を十分に活用できないことが明らかとなった。第二に、イスラム銀行は、ムダーラバによって資金運用を行う場合、契約条件の設定や契約締結後の投資先企業に対するモニタリング方法を工夫することによって、情報の非対称性に対応する用意があることが明らかとなった。 以上の結果は、イスラム金融をめぐる理念と実態との乖離の例としてしばしば取り上げられる、利益配当型の金融契約に関する適用実態の問題点とその背景を、聞き取り調査に基づきいて明らかにしている点において、イスラム銀行の行動に関する既存研究の進展に貢献するものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
GCC諸国のイスラム銀行を対象としたリスク管理や資産選択といったイスラム銀行の行動に関する聞き取り調査については、調査先となる金融機関への調査協力が十分に得られなかったことから、当該国での調査が進まなかったことから、分析作業に遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、研究目的の達成のため、現地調査を実施し、イスラム銀行への聞き取り調査を通じた定性的および定質的データの収集に努める。具体的には、GCC諸国では、カタールおよびクウェート、その他の中東地域では、エジプトとヨルダンでの聞き取り調査を速やかに実施することである。 調査先となる金融機関への調査協力については、バハレーン戦略国際エネルギー研究センター(旧バハレーン調査研究センター)からの協力に加えて、新たに、バハレーン大学およびイスラム開発銀行の協力を得ることによって効率的かつ迅速に進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用のための助成金が発生した理由は、本研究課題が現地での聞き取り調査に基づいているからであり、また、調査の進め方については、現地の協力機関との協議が必要となるからである。 現地調査および海外にて研究発表を行う理由から、旅費および滞在費を中心に請求助成金を利用する計画である。
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