研究課題/領域番号 |
24730205
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
安達 貴教 名古屋大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (50515153)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 寡占 / 価格戦略 / 経済厚生 |
研究概要 |
本研究は、企業が一つの財あるいはサーヴィスを単一の単位価格で販売するという、通常の分析で置かれる簡単化のための想定を離れ、現実における企業の多様な価格設定を実証的及び理論的に分析することをその主眼としている。平成24年度においては、実証的な分析のための準備を進めると同時に、理論的な研究において、幾つかの成果を上げた。より具体的には、研究論文「Complementing Cournot’s Analysis of Complements: Unidirectional Complementarity and Mergers」(海老名剛氏との共著)として纏め、査読制の英文学術雑誌に公刊が受理された。また同時に、本研究課題と関連する研究として、以前から行っている研究を取りまとめた論文として、寡占的な価格差別戦略の経済厚生に与える影響を理論的に分析した研究論文「The Welfare Effects of the Third-Degree Price Discrimination in a Differentiated Oligopoly」(松島法明氏との共著)、及び、本研究課題の実証的手法である構造推定に基づいた研究論文「Estimating a Cooperative Game of Bargaining: The Case of Government Formation」(光常正範氏との共著)については、更なる改訂を行い、現在、査読制の英文学術雑誌の審査中である。 また、本研究課題に関わる活動の一環として、「価格戦略研究会」を全4回主催した(平成24年4、5、7、11月)。関東地区、関西地区、中京地区の研究者が毎回平均10名前後が集い、産業組織論における研究成果を共有する場となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述のように、申請時の「研究の目的」とはやや異なり、平成24年度においては理論的な研究にウェイトが置かれたが、寡占的な状況における価格戦略の理解につながる一定の学術的成果を上げることができた。とりわけ、研究開始年度において、本研究課題の研究成果として、査読制の英文学術雑誌への公刊が決まったことに関しては、当初の計画以上の進展だったと言える。但し、実証分析への展開については、申請時での予定から少し遅れて、平成24年度の後半からのスタートとなったので、平成25年度以降は、実証的な研究についても、当初予定していた研究成果に結びつくようにしたい。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度においては、前年度後半より開始したデータセットの構築を行いながら、寡占的価格付けモデルの定式化、より具体的には、個人の財の購入を記述する選択モデルから市場需要を構築すると同時に(需要サイド)、複数企業の情報を組み合わせることによって、戦略的相互依存関係を表現する(供給サイド)。この構造的モデルをコンピュータでシミュレーション(数値分析)ができるように数理表現する。その後に、構築されたデータセットを用いてモデルのパラメータを推定するためのプログラムの制作に入っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成26年度においては、研究論文の報告のための各種セミナーや国内外の学会出席を主とし、同時に、各種調査資料・統計資料・図書の購入、英文校正費や各種データ収集と整理のための人件費や、数値計算・推定を効率的に行うためのコンピュータ機器への支出を予定している。
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