研究課題/領域番号 |
24730205
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
安達 貴教 名古屋大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (50515153)
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キーワード | 価格戦略 / 不完全競争 / 製品差別化 / 経済厚生 |
研究概要 |
本研究は、製品差別化といった要因から生じる不完全競争下において、価格差別を中心とする企業の価格戦略を理論的及び実証的な観点から分析することをその主眼とし、競争政策や消費者政策等への含意につながることを目的としている。平成25年度においては、理論的及び実証的な研究において幾つかの成果を上げると同時に、実証的な分析を進展させた。より具体的には、より具体的には、価格差別と経済厚生との関係に関して既存研究に比して新たな理論的な特徴付けを示した「The Welfare Effects of the Third-Degree Price Discrimination in a Differentiated Oligopoly」、本研究課題の実証的手法である構造推定に深く関わり、実証モデルの比較についての研究を行った論文「Estimating a Cooperative Game of Bargaining: The Case of Government Formation」及び、垂直的関係における価格戦略に関して、新たな概念に基づく特徴付けを示した理論的研究である「Double Marginalization and Cost Pass-Through: Weyl-Fabinger and Cowan Meet Spengler and Bresnahan-Reiss」といった論文が、査読制の英文学術雑誌に採択された。同時に、実証産業組織論における構造推定の手法に深く関わる研究として、「Do Voters Consider All Candidates? The Case of Proportional Representation」を進め、幾つかの学会において、この内容に関わる研究報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述のように、申請時の「研究の目的」と比べて、平成25年度においても、平成24年度と同様に、理論的な研究に重点が置かれることとなったが、不完全競争下における価格戦略の新たな理解につながる一定の学術的成果を上げることができた。とりわけ、平成24年度に続いて、本研究課題における成果として、複数の学術論文が、査読制の英文学術雑誌に掲載を許可されたことに関しては、当初の計画以上の進展と言える。また、平成25年度においては、これら理論的分析と並行して、アメリカ合衆国における電化チェーンの長期スキャンデータを用いた、小売店の価格戦略に関する実証的研究、及び、アメリカ合衆国における小売レヴェルのスキャンデータを用いた垂直的関係における上流企業の経営戦略と下流企業の価格戦略との関係に関する実証的研究も進め、平成26年度においても継続していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度においては、平成25年度において行ったデータセットの構築、簡単な予備的な計量分析、及び、経済モデルによる簡単な表現を踏まえ、最後の点である、経済モデルでの価格戦略行動の表現をより精緻化して、この構造モデルのパラメータの推定、及び、シミュレーション(数値分析)を行っていくことに注力する。同時に、上述の理論的な成果を踏まえた新たな研究にも着手し、本研究の目的である、理論及び実証の双方からの価格戦略の理解につながることを狙いとする。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度において購入したデータセットが、当初の予定のものよりもより低い価格で購入することが可能となったこと、及び、本格的な実証分析を平成26年度に集中的に行うことになったことから、数理処理ソフトウェアの購入及び更新を平成26年度に行った方が、より効率的な利用法であると判断されたため、当初の計画に若干の変更を加えた次第である。 上述のように、数理処理ソフトウェアの購入及び更新に充てられてる予定である。また、理論的分析が当初の計画より進展し、そのことにより、ヨーロッパにおいて開催予定の学会において、理論的分析に関わる研究報告を行う予定であることから、そのためにも充てられる予定である。
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