研究課題/領域番号 |
24730212
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
新井 泰弘 高知大学, 教育研究部人文社会科学系, 講師 (20611213)
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キーワード | 特許権 / 法と経済学 / 知的財産権 / イノベーション |
研究概要 |
昨年度と同様にArai (2009) “Intellectual Property Right Protection in the Software Market”のモデルが有する①侵害者と被害者の2者が同一市場に存在し、②特許権侵害によって、被害者と侵害者の商品品質差が縮まるという性質に着目し、このモデルの拡張に基づいて基礎モデルの精緻化を図った。また、EARIE 2013で報告及び討論を行いモデルに対するフィードバックを得ることができた。 また、今年度中に行った本研究と関連する研究として以下の3つが挙げられる。 ①著作権の侵害行為が有する正と負の外部性に着目したArai and Kinukawa (2014) “Copyright Infringement as User Innovation”をJournal of Cultural Economicsに出版した。この研究は知的財産権侵害がもたらす社会的なインパクトを考える上で、重要な関連性がある。 ②技術標準と研究開発行動に着目した研究であるAoki and Arai (2014) “Evolution of Standards and Innovation”を一橋大学経済研究所の青木玲子氏と行い、2013 North American Summer Meetingで報告し、ディスカッションペーパーとしても発行した。この研究は2企業の研究開発競争を取り扱っている点で本研究と関連性がある。 ③電子書籍を対象とした著作権者と出版社のライセンス契約と、その下での社会厚生分析を行った青木、新井(2014)「出版社の権利保護に関する経済学的分析」も法と経済学会2013年度全国大会で報告を行った後、ディスカッションペーパーとして発行している。この研究は、政策と社会厚生の間の関係性や、2企業間の戦略的行動を分析する上でも参考になっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度も昨年度に引き続き基本モデルの構築に取り掛かった。各種学会での報告と、それに対するフィードバック、また関連研究を進めることにより基本モデルを再構築し、フレームワークを作り上げた。現在、特許権侵害と品質改善のインセンティブの関係性等に関する政策的な分析を行っている。学会報告やディスカッションペーパーの発表、関連論文の出版等も積極的に行っているため、おおむね順調に進行していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度前半においては、基礎モデルの精緻化と応用モデルの作成に取り掛かる予定である。各制度と社会厚生の関係性や、開発のインセンティブに与える影響等の政策的な含意を中心にモデルの調整を行う予定である。 また、関連研究で行ったような各種制度との関連性や、著作権等の他の知的財産権制度との関係性についても言及を行い、より広い視野での提言を試みる。 こういった研究を進めるにあたり、適宜、一橋大学経済研究所の知財ワークショップ等で報告を行い、モデルの調整を行う。また、法と経済学会やEARIEに参加することで最新の研究動向を把握する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
学内行事のため、参加予定だった学会に参加することができなかったことで旅費の余剰分が生まれた。 EARIE2014への参加や研究に必要な機材購入に充てる予定である。
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