本稿では、社会的に望ましい特許侵害に対する懲罰制度について考察を行った。得られた結果は以下の通りである。社会的に望ましい期待罰則金額は研究開発者の研究開発費が小さい場合には0となり、開発費用の増加に伴って、期待罰則金額も増加する。特許権侵害に対する罰則の在り方については、米国のように民事罰のみで対処するケースと、日本のように刑事罰を交えて対処するケースが存在しているが、社会厚生上は民事罰のみのケースの方が刑事罰を用いた場合よりも好ましいことが示せた。但し、侵害者の罰則金額が「特許権侵害によって被った損害額」に依存して決定される場合は、刑事罰の方が社会的に好ましい可能性が示唆された。
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