本研究は、サービス貿易に関して課されている種々の貿易障壁がどの程度の経済的インパクトを持っているかを計量分析によって確認し、その削減がサービス産業の生産性向上によるサービスの生産コストの低下を通じて、サービス産業のみならず製造業企業の生産性向上、海外進出による国際生産ネットワーク形成に寄与する可能性を実証的に検証することを目指した。特に、国際間の移動の円滑化(ヒト・モノ)が貿易円滑化、および外資系企業の直接投資促進を通じて製造業の国際生産ネットワーク形成に寄与するかを確認した。この研究は、理論的には「フラグメンテーション理論」とよばれる国際的な生産工程の分散立地とネットワーク形成を説明する理論の実証分析による検証と位置づけられるとともに、現実面でも特に東アジア・ASEAN地域で顕著に観察される国際産業ネットワークの形成・深化の要因とそのための政策的示唆を得るために重要な知見を与える研究と見なすことが出来る。研究の結果、当初の目標である、サービス・リンク・コストとよばれるフラグメンテーションを促進する国際的に分散立地した生産工程間をつなぐサービスのコストすべてに関して、その推移と生産ネットワーク形成に対する影響を計測、検証することは統計データ化することが困難な質的情報も多く果たせなかったものの、特にグローバル化の進展によりヒト、モノの移動の促進(これもまたトランザクション・コスト、コミュニケーション・コストの削減に寄与する、貿易円滑化の重要な要素である)が国際的生産ネットワークの進展に寄与している可能性が高いことはある程度明らかに出来たと考えている。残念ながら最終年度内にアクセプトされた論文はないが、引き続きアクセプトされるよう投稿を続ける。
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