平成27年度においては、企業間の取引ネットワークが土地利用や立地選択行動に及ぼす影響についての実証分析を行った。 第一に、企業間ネットワークと海外直接投資の関係について、過年度に作成したモデルの改訂を行い、企業が他企業に対する期待だけではなく、他企業の行動の観察結果に対して反応する動学的拡張を行うとともに、理論的に扱いやすいモデルとなるようにモデルの解き直しを行った。また、実証分析においては企業の個別データをパネル化し、新規の海外投資が国内の取引ネットワークからどのような影響を受けているかについての分析を進めた。その結果、直接的な投資の観察だけでなく、ネットワークを通じた観察効果、つまり期待が、企業の直接投資に影響を与えることが明らかとなった。本年度は投稿プロセスの一環として、本研究の成果を明確にするための、経済学だけでなく経営学も含めた、既存文献の徹底したレビューを実施した。その結果本研究の貢献は、既存企業の投資という既存の集積に対する反応だけでなく、そうした集積がそもそもどのように形成されるかを、ネットワークを通じて明らかにした点にある。これらの点を踏まえて、昨年度からの論文全体の大幅な書き直しを行い、複数の国際学術誌への投稿を継続的に実施している。 第二に、上記研究と平行して、企業間の立地ネットワークと土地利用についての実証研究を行い、工業部門の土地利用外部性を計測する手法に関する研究も実施しており、本年度はその成果の一部について報告している。
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