研究課題/領域番号 |
24730217
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 奈良県立大学 |
研究代表者 |
斉藤 宗之 奈良県立大学, 地域創造学部, 准教授 (00547250)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 応用経済 / 経済理論 / 国際経済 |
研究概要 |
現在、各国で環境汚染・温暖化を緩和させ、資源を保全することが求められている。そこで、資源と失業の存在を同時に考慮したモデルを構築し、貿易政策・環境政策・労働政策などの効果を分析することが本研究の目的である。そこで平成24年度は、〝Trade Policies with Common Resources and Unemployment″(阿部顕三大阪大学教授との共著)を著した。以下、概要を示す。 本論文は、都市では組合や最低賃金法などにより、労働市場における賃金率が下方硬直的で、完全雇用が達成されないほどの高賃金であると仮定した標準的なHarris=Todaroモデルを用いる。しかしながら、農村では木材加工製品を生産しているが、森林資源がある土地の所有権が十分確定していない状況を想定し、森林資源保護のための木材加工製品に対する輸出税政策が失業率と厚生に与える影響を分析した。 得られた主要な結論として3点挙げることができる。第1に、木材加工製品に対する輸出税の引き上げは、都市失業率を上昇させる。第2に、厚生に対する効果は、もし都市において失業が存在しなければ、輸出税の導入は厚生を改善するが、都市に失業が存在し、消費者に対する環境ダメージが十分大きいならば、厚生を悪化させてしまう。第3に、都市に失業が存在し、農村において森林資源の所有権が十分確立されていなければ、最適な輸出税率は調整された限界環境ダメージよりも低くなり、さらに、消費者に対する環境ダメージが十分小さければ、輸出補助金が最適となる。 以上の結果から、途上国のように雇用拡大と環境資源保全に直面している政府は、雇用拡大に軸足を起きやすく、環境保全のための輸出税よりも輸出補助金を選択しやすいといえる。今後、環境保全と失業を同時に改善するために、第二の政策を導入し、輸出税との最適な組み合わせ等の分析を検討したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
貿易と環境、失業に関する問題のうち、環境問題と失業の関係に注目し、環境税などの負担により企業が雇用を減らし、失業などに影響を与えるのではないかとの懸念があるが、一方で、持続可能な形で資源を残すために、なんらかの適切な政策が求められている。特に、途上国などでは雇用維持の側面がある。そこで、環境問題と失業の存在を同時に考慮した開放経済モデルを構築し、環境政策や貿易政策、雇用政策が失業に与える影響、あるいは雇用を維持し、環境を改善するためにはどのような政策介入が妥当なのかを明らかにすることが本研究の目的である。 そこで、平成24年度は、都市において組合や最低賃金法などにより労働市場における賃金率が下方硬直的で、完全雇用が達成されないほどの高賃金であると仮定した標準的なHarris=Todaroのモデルを用い、さらに、農村では木材加工製品を生産しているが、森林資源がある土地の所有権が十分確定していない状況を想定し、木材加工製品に対する輸出税政策による失業率、厚生に対する影響を分析した。この分析は、申請当初予定していた分析であり、平成24年度の計画をある程度達成できたと考えられる。しかしながら、環境保全としての輸出税政策のみを分析している点でまだ十分ではなく、環境資源の保全と雇用拡大を同時に達成しうるような輸出税と他の政策の組み合わせなどを分析する必要性があったと考える。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の前半では、昨年度に執筆した論文をさらに加筆・修正し、海外雑誌に投稿する予定である。 さらに、現在、各国で環境汚染・温暖化を低下させ、資源を保全することが求められているが、途上国における資源の過剰搾取が問題となっている。そこで、今年度は資源と失業の存在を同時に考慮した2国貿易モデルを構築し、貿易政策・環境政策・労働政策などの効果を分析する。具体的には、資源と失業の存在を同時的に考慮した貿易モデルを構築し、分析を行う場合、(1)資源の特徴づけ、(2)失業のタイプ(効率賃金仮説、摩擦的失業)などに応じて、様々な分析パターンが考えられるが、その下で、二国間南北貿易モデルにおいて、貿易を開始することによる南の途上国における失業や資源への効果、また、貿易・環境・労働政策がどのような効果を持つのかを明らかにしたい。そこでまず、Brander and Taylor(1998)の2国モデルに、効率賃金仮説による失業モデルを導入する。ただし、現在のところ、両国ともに同じタイプの失業を想定して分析しようと考えている。その下で、閉鎖経済下と開放経済下で失業・資源がどのように変化し、厚生に対してどのような影響があるかを検討したい。 また、うまく研究成果が得られない場合は、先進国・新興国など含めて工業化の進展によって深刻化している環境汚染の問題を取り上げたいと思う。単に明示的な環境資源の過剰搾取ではなく、生産による環境汚染排出物を考慮した国際複占・失業下における最適環境政策を分析したいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
今まで書いた論文とこれからの論文に対する英文校閲に約20万ほどかかる予定である。また、国内・海外の学会等への発表・参加における旅費・滞在費で約25万程使用する予定である。具体的には、日本国際経済学会・日本経済学会・ETSG(European Trade Study Group)への発表・参加である。 さらに、論文執筆に関わる専門書籍購入の購入に約20万ほど使用する予定である。 また、消耗品(プリンターのトナー)・ソフト購入費(GAMS)等に約8万ほど使用する予定である。
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