研究課題/領域番号 |
24730217
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研究機関 | 奈良県立大学 |
研究代表者 |
斉藤 宗之 奈良県立大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (00547250)
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キーワード | trade policy / renewable resource / unemployment / labor migration |
研究概要 |
現在、各国で環境汚染・温暖化を緩和させ、資源を保全することが求められている。そこで、前年度に続き、資源と失業の存在を同時に考慮したモデルを構築し、貿易政策・環境政策・労働政策などの効果を分析することが本研究の目的である。そこで平成25年度は、〝Trade and Environmental Policies, Renewable Resources and Unemployment″(阿部顕三大阪大学教授との共著)を著した。以下、概要を示す。 本論文は、都市では組合や最低賃金法などにより、労働市場における賃金率が下方硬直的で、完全雇用が達成されないほどの高賃金であると仮定した標準的なHarris=Todaroモデルを用いる。しかしながら、農村では再生可能な資源である森林資源から木材を生産しているが、木材の生産が森林資源の減少を通じ、農業部門へ負の外部性をもたらす状況を想定した。この下で、森林資源ストックが所与である短期と森林資源ストックが変化する長期において、木材輸出に対する輸出税と農業生産に対する生産補助金の森林資源ストックと失業率、厚生に与える効果を分析した。 得られた主要な結論として3点を挙げることができる。第1に、木材生産に対する輸出税の引き上げは、短期的には都市失業率を上昇させ、厚生を悪化させる。最適な政策は、輸出補助金政策となる。第2に、長期的には、輸出税は自然資源ストックを上昇させるが、農業部門への負の外部性が大きければ、失業率を減少させる可能性がある。第3に、長期において、農業部門への生産補助金が利用可能であれば、最適な政策は輸出税、あるいは輸出補助金のどちらとも可能性がある。しかしながら、木材生産の農業に対する外部性が大きく、森林資源の過剰伐採が行われている状況下では、木材輸出税と農業生産補助金の組み合わせが最適な政策の組み合わせとなる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
貿易と環境、失業に関する問題のうち、環境問題と失業の関係に注目し、環境税などの負担により企業が雇用を減らし、失業などに影響を与えるのではないかとの懸念があるが、一方で、持続可能な形で資源を残すために、なんらかの適切な政策が求められている。 特に、途上国などでは雇用維持の側面がある。そこで、環境問題と失業の存在を同時に考慮した開放経済モデルを構築し、環境政策や貿易政策、雇用政策が失業に与える影響、あるいは雇用を維持し、環境を改善するためにはどのような政策介入が妥当なのかを明らかにすることが本研究の目的である。 そこで、平成25年度は、都市において組合や最低賃金法などにより労働市場における賃金率が下方硬直的で、完全雇用が達成されな いほどの高賃金であると仮定した標準的なHarris=Todaroのモデルを用い、さらに、農村部門では森林資源から木材を生産し、木材の生産は森林資源の減少を意味し、森林資源の減少は農業に用いられる土地の土壌を悪化させるという負の外部性をもたらす状況を想定し、木材に対する輸出税、農業に対する生産補助金政策による自然資源ストック、失業率、厚生に対する影響を分析した。この分析は成24年度の計画の中で想定していた分析の継続で、当初の予定から変更をしてはいるが、おおむね順調に研究を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の前半では、昨年度に執筆した論文をさらに加筆・修正し、海外雑誌に投稿する予定である。 さらに、現在、各国で環境汚染・温暖化を低下させ、資源を保全することが求められているが、途上国における資源の過剰搾取が問 題となっている。そこで、今年度は資源と失業の存在を同時に考慮した2国貿易モデルを構築し、貿易政策・環境政策・労働政策などの効果を分析する。具体的には、資源と失業の存在を同時的に考慮した貿易モデルを構築し、分析を行う場合、(1)資源の特徴づけ、(2)失業のタイプ(効率賃金仮説、摩擦的失業)などに応じて、様々な分析パターンが考えられるが、その下で、二国間南北貿易モデルにおいて、貿易を開始することによる南の途上国における失業や資源への効果、また、貿易・環境・労働政策がどのような効果を持つのかを明らかにしたい。そこでまず、Brander and Taylor(1998)の2国モデルに、効率賃金仮説による失業モデルを導入する。ただし、現在のところ、両国ともに同じタイプの失業を想定して分析しようと考えている。その下で、閉鎖経済下と開放経済下で失業・資源が どのように変化し、厚生に対してどのような影響があるかを検討したい。 また、うまく研究成果が得られない場合は、先進国・新興国など含めて工業化の進展によって深刻化している環境汚染の問題を取り上げたいと思う。単に明示的な環境資源の過剰搾取ではなく、生産による環境汚染排出物を考慮した国際複占・失業下における最適環境政策を分析したいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
海外学会での発表等を予定していたが、学務等の都合でできなかったために生じた。 今まで書いた論文とこれからの論文に対する英文校閲に約15万ほどかかる予定である。また、国内・海外の学会等への発表・参加における旅費・滞在費で約20万程使用する予定である。具体的には、日本国際経済学会・日本経済学会・ETSG(European Trade Study Group)への発表・参加である。 さらに、論文執筆に関わる専門書籍購入の購入に約15万ほど使用する予定である。 また、消耗品(プリンターのトナー)・ソフト購入費(GAMS)等に約10万ほど使用する予定である。
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