研究実績の概要 |
平成26年度は、杉山泰之氏と“Trade, Fair Wages, and the Environment under International Oligopoly”を、加藤真也氏・武田史郎氏と“The effects of immigration on Japan: A computable general equilibrium assessment”を著した。以下、概要を示す。 第一の論文では、同質財を生産する企業が自国と外国の両国に1社ずつ存在する状況を想定し、環境政策(排出基準規制)が各国の失業率に与える影響を明らかにした。本来、国際寡占下での環境政策は自国企業の競争上の影響を考慮して、弱めに課すことが最適とされるが、本稿では、公正賃金に基づく失業モデルを導入することで、自らの賃金が公正であることの比較対象としての他の所得 (資本所得や熟練労働者の賃金)が高くなることで、労働意欲が低下し、失業率が上昇することから、逆に、環境政策を厳しくする方に逸脱することで自国の経済厚生が改善する可能性があることを明らかにした。 第二の論文では、環境、労働移動と失業の応用一般均衡モデルによるシミュレーション分析を行う研究の前段階として、まず最もシンプルな外国人労働者の受け入れが日本経済に与える影響を定量的に分析した。 モデルには、32部門、2010~2020年の逐次動学モデルを前提とし、労働を熟練労働・非熟練労働の2つのタイプに分類し、今後の日本において10年間で200万人の非熟練外国人労働者が流入するという設定をメインのシナリオとして分析した。メインのシナリオでの主な結果は、外国人労働の受け入れで、非熟練労働の賃金は2.5%低下したのに対し、熟練労働の賃金は0.3%上昇、資本のレンタルプライスは1.3%上昇した。マクロ的な影響としては、GDPが約1.7%増加した。
|