研究概要 |
排他条件付取引は、上流部門もしくは下流部門の企業が垂直的取引において他の競合他社と取引を行わないよう、契約を行うことを指す。排他条件付取引には、効率的な企業の参入を阻止や、ライバル企業を市場から追い出す競争制限効果が存在すると考えられている。しかし、常に競争制限効果があるとも言えず、投資を促進するためにこうした取引が行われているということも指摘されている。本研究では、排他条件付取引契約が競争制限効果を持つ市場環境について理論分析・実験分析を行う。 まず実験分析であるが、実験分析は3年計画で遂行する予定であり、現時点では研究成果として公表できるものはない状態である。 一方、理論分析では複数の成果が出ている。ここでは2つの研究について説明を行う。まず、Kitamura, Sato, and Arai(forthcoming)では、反競争的な排他条件付取引契約の交渉においては、直営店の設置は信頼できる脅しとなり、川下市場で競争が全くない状況であっても、反競争的な排他条件付取引に企業が従事する可能性があることを示した。この研究より、排他条件付取引が競争制限的かどうかを検証する際には、見た目の川下市場の競争状況のみに注目してはいけないという政策的含意が得られた。この研究は外部で複数回発表され、海外の英文査読誌に掲載されている。 次にKitamura, Matsushima, and Sato (2013 未公刊論文)では、川下市場における参入阻止に注目し、川上企業が供給する財の加工技術について参入企業が効率的である場合、排他条件付取引による参入阻止が実現可能であることを示した。この研究結果により、排他条件付取引はこれまで以上に反競争的な目的で実現しやすいという政策的含意を得た。この研究は外部で複数回発表されており、現在海外英文査読誌への投稿に向けて準備をしているところである。
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