研究概要 |
排他条件付取引は、上流部門もしくは下流部門の企業が垂直取引において他の競合他社と取引を行わないよう、契約を行うことを指す。排他条件付取引が反競争的な目的で実現するためには、川上企業および川下企業の双方にとって契約に参加することが望ましい状況が実現している必要がある。しかし、川上川下双方の参加条件を考慮に入れると反競争的な排他条件付取引は、特定の市場環境のみでしか実現しないということがこれまでの理論分析で明らかになっている。本研究では、反競争的な排他条件付取引が実現する市場環境を理論分析・実験分析を通じて整理することを目的とする。このうち、実験分析については実験のデータがそろっていないため、公表できる段階にはない。 一方、理論分析では、複数の成果が得られた。特に成果があったと思われる研究は、Kitamura, Matsushima, and Sato (2013)である。この研究では、川下市場における参入阻止に注目し、川上企業が供給する財の変形技術について川下企業間で効率性に差がある状況を分析している。分析の結果、川上企業の供給する財について参入企業が効率的である場合、反競争的な排他条件付取引が実現することが明らかになった。追加分析の結果は、一般の需要関数の下でも成立することが明らかになり、結果の頑健性が確認されてた。この研究は国内外の学会・研究会で報告され、現在国際査読誌へ投稿中である。 今後大きな成果が期待できる研究は、Kitamura, Matsushima, and Sato (2014)である。この研究では、補完材供給企業の存在に注目し、川上市場における参入阻止を理論的に分析している。分析の結果、補完材供給企業が価格支配力を持つ場合、反競争的な排他条件付取引が実現することがわかった。現在のこの結果の頑健性について様々な角度から分析を行っている。2014年度はこの研究を国内外の学会・研究会で報告し、国際雑誌へ投稿したいと考えている。
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