研究課題/領域番号 |
24730227
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研究機関 | 名古屋商科大学 |
研究代表者 |
久米 功一 名古屋商科大学, 経済学部, 准教授 (80595306)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 非正規雇用 / 労働供給 / 留保賃金 / 補償賃金 / 幸福度 |
研究概要 |
本研究は、経済主体の選好の異質性が経済的な成果、とくに労働供給に与える影響を分析している。まず、非正規労働者の労働供給について「非正規労働者の留保賃金と長期失業」(鶴光太郎氏との共著)を2012年6月の日本経済学会で報告した。非正規雇用から正社員あるいは失業に転じる場合の決定要因について、雇用形態や留保賃金の違いに注目して実証的に分析した。標準的なサーチ理論の示唆と異なり、留保賃金の高止まりが長期失業を招いているわけではなく、留保賃金には選好の異質性が影響することを明らかにした。この報告に対する討論者(小原美紀氏)のコメントを反映させた「非正規労働者の雇用転換-正社員化と失業化」を2013年2月にRIETI DP 13-J-005として公刊した。また、非正規労働者の処遇の違いには、補償賃金プレミアムに対する選好の違いが少なからず反映されている点に鑑みて、非正規労働者に対して、雇用期間の短縮や転勤・異動を受け入れる場合に要求する賃金の上乗せ分を仮想的に質問して定量的に把握して「非正規労働者からみた補償賃金-不安定雇用、暗黙的な正社員拘束と賃金プレミアムの分析-」(RIETI DP 13-J-003)にまとめた(鶴光太郎氏、大竹文雄氏、奥平寛子氏との共著)。正社員の経験がある人や正社員の職を希望する人の不安定雇用に対して求める補償は大きく、自発的にパートタイム労働に就いている人の転勤・異動に対して求める補償が大きかった。さらに、人びとの選好の違いに関連して、幸福度とその経済政策的な含意を再検討した「経済政策における幸福度の再検討―想起・順応・合理化の視点から」を2012年12月の行動経済学会第6回大会にて報告した。幸福から連想する言葉や内容は人によって異なり、それが主観的幸福度の違いをもたらすこと、ある種の世界観は幸福度や所得に有意に影響することを実証的に明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
既にあるデータを用いた研究であり、学会報告やディスカッションペーパー公刊のタイミングで作業したことから、おおむね予定通り、進捗した。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度から25年度にかけて収集した新しいデータをもとに、選好の異質性や価値観の違いが、経済的な成果(とくに労働)にどのような影響をもたらすかを研究する。これらを論文にまとめるとともに、その成果を学会報告していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
学会報告旅費や投稿料・英文校正費として使用する予定である。
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