本年度における研究成果としては、昨年度に実施した実証分析の結果に対して、追加分析を行うなど、再度検討し、論文として、まとめたことである。主な研究成果は以下の通りである。 まず、M&Aが、その後の企業パフォーマンスに与える影響については、PSM(Propensity Score Matching)法を用いて、分析を行った。その結果、長期的には、R&D投資を増加させることから、M&Aとの相乗効果が働いていることがわかったが、一方で、財務パフォ-マンスが悪化していることも明らかになった。 次に、株価における、M&A実施の経済効果については、累積超過収益率(CAR:Cumulative abnormal Return)と持ちきり超過収益率(BHAR: Buy-and-Hold Abnormal Return)の計測、さらに、カレンダータイム・ポートフォリオ(Calendar Time Portfolio)による分析といった3つの方法により、検証した。その際、累積超過収益率(CAR:Cumulative abnormal Return)や持ちきり超過収益率(BHAR:Buy-and-Hold Abnormal Return)の計測で必要となるベンチマークの選定では、Propensity Score Matching(PSM)法によるマッチングの結果を利用したが、この点が、わが国のM&A研究における先行研究にはみられない、本研究の特徴である。分析結果によると、3つの方法では、それぞれ異なった結果が得られており、分析結果の頑健性に問題が残り、明確な結論を得ることはできなかった。しかし、先行研究でも同じように、分析手法を変えることで、異なった分析結果が得られていることから、なにより先に、長期の株価分析の手法を確立させることの必要性を明らかにできた点は、本研究による成果といえる。
|