外資企業が地場企業の生産性に与える効果：カンボジアの事例

2012 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 24730232
• 研究種目: 若手研究(B)
• 研究機関: 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所
• 研究代表者: 田中 清泰 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, その他部局等, 研究員 (30581368)
• 研究期間 (年度): 2012-04-01 – 2016-03-31
• キーワード: カンボジア / 経済センサス / ミクロデータ / 企業分析 / 生産性

研究概要

研究初年度は、カンボジアの2011年度経済センサスデータを購入して、企業・事業所の生産性を推定した。経済センサスデータの購入は、調査結果が2012年3月に正式に公表された後に、カンボジア統計局を訪問して現地でデータ購入の手続きを行った。
経済センサスデータには基本的な財務諸表の情報が調査されているので、販売額、資本、また労働のデータを使って生産性を推定することができる。当初の目的通りに、推定した生産性データを用いて、外資企業の生産性が地場企業の生産性よりも高いのか、を検証する準備ができた。
一方で、当初想定していない問題がいくつか分かった。例えば、カンボジアにおいて財務諸表を正確に記録している事業所は非常に少ないため、生産性が推定できる事業所の数があまり多くない点。財務諸表のデータが報告されている事業所サンプルでは、記載されている販売額などの数字の信憑性が低い可能性がある点。この点に関しては経済センサスデータの修正版を利用する予定である。また、上記の問題と関連して、想定した外資企業のサンプル数がそれほど多くない点が挙げられる。そのため、当初の目的通りに外資企業と地場企業の生産性比較を単純に行うのは問題があるかもしれないと分かった。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の研究計画で予定した通りに、研究初年度はカンボジアの2011年度経済センサスデータを購入して、企業・事業所の生産性を推定することができた。そのため、現在までの研究の進行は順調である。

今後の研究の推進方策

平成25年度はカンボジア企業調査を準備して実施する。効率的な企業調査のためには、調査対象となる企業の選択が重要となる。そのため、経済センサスデータの事業所リストや生産性推定の結果、また現地調査でのヒアリングから対象企業の実態把握を進めていく。特に、外資企業と取引をしている地場企業を特定する必要があるため、はじめにこの点を入念に検討していく。
調査対象が決まってから調査項目の設定を進める。調査の回答率が低くならないためには、回答することが比較的容易な調査項目を設定する必要がある。しかし一方で、分析のためには、企業間のより詳細な取引関係（どういった財・サービスの提供やその取引額）を調べる必要がある。
こうした問題点を総合的に判断するために、今年度はカンボジアにおける代表的な産業の調査を重点的に進める。例えば、製造業においては縫製産業が大きな産業であり、中国や台湾の外資企業の進出も盛んである。また、サービス業においては観光産業が大きな産業で、アンコールワットを代表とする古代遺跡があるシェムリアップでは外資ホテルの進出が盛んである。現地調査によって現在の状況を精査して、企業調査を準備して実施する予定である。

次年度の研究費の使用計画

次年度の研究費について現地調査および企業調査の準備や実施に使用する予定である。また、研究に関連する書籍の購入や、研究動向を調べるために関連する学会に出席する費用に使う。