カンボジア2011年度経済センサスの個票データを活用した計量分析と、現地に進出している外資企業のインタビュー調査から、外資企業が地場企業の生産性に与える効果は限定的であることが示唆された。外資企業の影響が限定的な理由として、カンボジアにおける地場企業の大部分は、企業登録や税務登録をしていないインフォーマル企業である点が指摘できる。こうしたインフォーマル企業は小規模で生産性が低いだけでなく、外資企業のようなフォーマル企業との取引関係も弱い。産業基盤が未熟なカンボジア経済において外資企業の影響を考察するためには、フォーマル企業とインフォーマル企業の活動を把握する必要がある。 こうした背景から、カンボジア2011年度経済センサスの個票データを活用して、カンボジア経済におけるフォーマル企業とインフォーマル企業の特徴を明らかにした。例えば、カンボジアにおける非農業部門の事業所数を見ると、96.6%は企業登録をしていないインフォーマル企業と分類できる。インフォーマル企業は、売上総額の76.6%を占めている。さらに、カンボジアのインフォーマル企業の変化を時系列で分析するために、夜間光の衛星画像データを活用した推定方法を新しく提案した。カンボジア経済においてフォーマル企業に対してインフォーマル企業の規模は絶対的にも相対的にも増加してきていることが分かった。
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