研究課題/領域番号 |
24730233
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所 |
研究代表者 |
町北 朋洋 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, その他部局等, その他 (70377042)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 雇用の非正規化 / サプライチェーン |
研究概要 |
国際貿易とスキル、国際貿易と組織の関係は近年、研究が進んだものの、スキルについては企業内・工場内の学歴や職業構成変化の把握に留まり、組織革新についてはITやCAD/CAM、あるいはフラット化などの把握に留まっている。いずれも、官庁統計の制約に由来し、特殊な仮定を設定しない限り、企業が直接輸出、輸入に関与しないものの生産ネットワークを通じて国際貿易に参加するという上流・下流問題を十分に統計的に把握することが難しい。 本研究の一年目は既存研究とは異なる新しいデータを用い、更にこれまでと違った見地から、国際貿易とスキル、組織革新の関係を描写した。具体的には、筆者が収集しつつある東南アジアのサプライチェーンのデータを用いて、スキルは学歴構成で測定し、企業訓練・組織革新は、技術者や専門家の派遣受入やプロセス改善などを用いて計測し、次の二点についてのファクトを整理した。第一に、輸出と輸入のそれぞれ、または輸出と輸入が同時にスキルと組織革新に与える影響を調べている。輸出、輸入に直接関与する企業はそうでない企業に比べて学歴が高く、賃金も高く、また賃金分散も大きいことが近年示されているが、こうした事実は、特定の国際サプライチェーンについても当てはまるものかを確認する。第二に、国内に立地する外資系企業とのつながりと、スキル及び組織革新の関係を調べた。直接国際貿易に関与していなくとも、外資系企業に販売したり、外資系企業から調達することで、国際貿易に二次的に関与する場合がある。この二点から、地場企業に技術指導を行う外資系企業、または国際貿易の特徴や、外国または国内の外資系企業から技術を受容できる地場企業の特性を抽出しつつある。最後に、企業異質性の源泉を人材と捉え、生産チェーン内部で組織的な情報の吸収と、取引先への技術指導・技術受容を組み合わせたマッチング・モデルの作成を翌年度以降の課題とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は未だ因果関係を示すには至っていないが、既存研究とは異なる、全く新しいデータを用いて、現在、学術的にも、産業政策としても重要になっている国際貿易と労働・産業組織面の関わりについての理解を深めることを目的にしている。このため、理論モデルの作成に寄与するファクトの抽出、理論モデルの作成、理論モデルから得られる実証仮説の検証という三段階をて丁寧に見てゆく。現在は、ファクトの抽出に取り組み、その整理を行っている最中であり、おおむね、当初の予定と相違なく進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後、理論モデルの作成にあたって、ファクトを再整理、再構成するが、更に深い理論的予測を得るため、地場企業に技術指導を行う外資系企業、または国際貿易の特徴や、外国または国内の外資系企業から技術を受容できる地場企業の特性を抽出したい。また、主たる販売先、調達先のデータと企業の情報ソースを用いて、「人材アウトソース」の可能性についても調べる。具体的に、輸出地場企業は、そうではない地場企業に比べ、仲介業者や公的な情報ソースに対し、より依存することになるの、自社または主たる取引先が有する技術や技能、あるいは特性と補完的な情報ソースが組織的に選ばれるのだろうか、それとも、代替し得る情報ソースが組織能力を高めるために選ばれるのだろうか、といった課題に取り組む。主たる取引先や輸出、輸入毎に、情報ソースの種類と数を並べて、どういった組織能力形成のパターンが観察されるのかを調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費の使用計画としては、(1) 一年目に積み上げたファクトを英文ディスカッションペーパーとして公表、または学術誌に投稿するための英文校正費、(2)とりあえず現時点でまとめた研究成果を発表するための出張旅費、(3)更なるデータを収集し、フィールドワークを行うための現地調査費の3点を予定している。
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