研究課題/領域番号 |
24730233
|
研究機関 | 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所 |
研究代表者 |
町北 朋洋 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, その他部局等, 研究員 (70377042)
|
キーワード | 労働経済学 / 雇用の非正規化 / サプライチェーン / 産業高度化 / 技術移転 |
研究概要 |
本研究では、雇用の非正規化が経済のグローバル化からどの程度説明されるのかを分析するにあたり、サプライチェーンネットワーク形成に注目する。国際貿易とスキル、国際貿易と組織の関係は近年、研究が進んだものの、スキルについては企業内・工場内の学歴や職業構成変化の把握に留まり、組織革新についてはITやCAD/CAM、あるいはフラット化などの把握に留まっている。いずれも、官庁統計の制約に由来し、企業が直接輸出、輸入に関与しないものの生産ネットワークを通じて国際貿易に参加するというサプライチェーンネットワークの本質を十分に統計的に把握することが難しい。本研究では既存研究とは異なる新しいデータを用いて、国際貿易とスキル、組織革新の関係を描写した。具体的には、筆者が収集しつつある東南アジアのサプライチェーンのデータを用いて、次の三点の研究課題に取り組んでいる。第一に、輸出と輸入のそれぞれ、または輸出と輸入が同時にスキルと組織革新に与える影響を調べた。輸出、輸入に直接関与する企業はそうでない企業に比べて学歴が高く、賃金も高く、また賃金分散も大きいことが近年示されているが、こうした事実は、特定の国際サプライチェーンについても当てはまるものかを確認した。次に、国内に立地する外資系企業とのつながりと、スキル及び組織革新の関係を調べた。直接国際貿易に関与していなくとも、外資系企業への販売、調達を通じ、国際貿易に二次的に関与する場合がある。最後に、企業間の技術移転と企業間で行われる国際貿易の関わりを調べることで、企業間の技術移転を支える雇用や企業訓練の在り方を抽出しつつある。これらの観察に基づき、企業異質性の源泉を人材と捉え、組織的な情報吸収と、取引先への技術指導・技術受容を組み合わせたマッチング・モデルの作成を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ここまで、当初の予定した独自データの収集、加工、既存の理論の吟味に加えて、新しい仮説の作成が進みつつあるため。
|
今後の研究の推進方策 |
当初設定した研究課題を大きく変更する必要は感じていないが、今後の研究の推進策として二点考えている。一点目は、これまでの二年間で執筆、公表してきた複数の研究成果を整理し、そこでは未だ明らかにされていないが重要だと思われる国際技術移転についての共通課題を二点ほど抽出し、本研究のもともとの研究目的、雇用の非正規化と経済のグローバル化の関係の間に位置づけなおすことである。もう一点は、雇用の非正規化と経済のグローバル化の関係を描写する際、国内経済地理に踏み込んだ分析を行い、国内経済地理の状況によって経済のグローバル化の影響が異なることを折り込んだ分析を行うことである。
|
次年度の研究費の使用計画 |
大きくは、当初予定していた海外出張の中止と次年度への延期のため。また一部のデータ入力と加工については、人件費・謝金を用いた委託ではなく、筆者自ら行ったため。 今後の海外出張計画が定まりつつあり、当初予定した海外研究滞在日数に近づきつつある。今後はデータの入力については外部委託を進め、人件費・謝金を用いる。
|