最終年度における研究成果としては、まず第一に、モデルの改善を行った。企業の異質性をより深く考慮に入れるため、モデル内に存在する企業の数を増やした。これにより、モデルの精度を向上させることができたと思われる。ただし、計算にかかる負担が大きくなるので、シミュレーションプログラムの構成を抜本的に見直す必要があった。計算プログラムの改善には2ヶ月以上の時間がかかったが、シミュレーションにかかる計算時間を短縮することもできた。第二に、2014年8月に旭川大学において「進化経済学会 制度と統治部会」が開催された際に報告させてもらい、参加者から有益なコメントを得ることができた。さらに、2015年3月にはタイで開催されたカンファレンスである "Trends in Multidisciplinary Business and Economic Research"で報告をし、報告ペーパー("An Examination on the Zombie Theory: An Agent-Based Approach")はセッションのベストペーパーに選出された。 研究成果の意義として重要なものは、個別企業の生産性が高まることが経済全体のパフォーマンスを改善するとは限らない、ということである。企業間のネットワークを保全することと、生産性の低い企業を経済から撤退させることにはトレード・オフが存在する。生産性の低い企業でも経済のネットワークの一端を担っているので、それを残すことによって経済全体のパフォーマンスを向上させることにつながる場合があるのである。
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