研究概要 |
以下の2つの研究を行った。 1.アメリカの経済成長と分配に関わるDGEモデル構築:日本の高度成長とその後の停滞の要因の一つは、「アメリカ企業の日本企業への技術移転」にある。アメリカ企業の日本への技術移転の停滞と時期を同じくして、アメリカ企業は中位層への分配を (上位所得レベルに比して)行わず、結果として所得格差が拡大した。こうしたアメリカの分配のあり方は、日本への技術移転の停滞、さらには日本経済の停滞に影響を及ぼしたと考えられる。そこで、アメリカの所得格差拡大を、所得税の最高税率の変化で説明するDGEモデルを構築し(Aoki and Nirei, 2014)、国内外で発表を行った。 2.イノベーション・技術開発の停滞要因のモデル構築:日本の高度成長とその後の停滞の要因の一つは技術の停滞である。経済成長の停滞は、全要素生産性(TFP)の停滞と関係があり、TFPと研究活動にも関連があることが示唆されるからである。ここでは、近年の日本の大学の論文数も停滞に着目しその要因について定量的に分析した。本プロジェクトでは、日本の大学の論文数の停滞を、マクロ経済学の成長会計の手法を用いて分析する研究を行い、その原因が研究時間によって定量的に説明できることを明らかにした(Aoki and Kimura, 2014)。また、この研究を学会等で発表している。 今後の研究の展開:上で説明した研究成果は、それぞれ、日本の高度成長とその後の停滞の「技術」に関わる要因、具体的には技術移転と、技術開発を説明するものである。それらを組み込んだモデル、すなわち、日本の高度成長とその後の停滞の原因を、技術の側面に着目した統合モデルの構築については、期間内に至らなかった。この点に関して引き続き取り組み、平成26年度中に研究を完成させる予定である。
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