平成27年度は外国為替市場における情報の不完全性と流動性の罠との関係について研究を行った。先進各国において名目金利がゼロに近く国際間金利差が非常に小さくなっている状況下において、名目為替レートが大きく変動していることはカバー無し金利平価による為替レートの決定理論では説明がつかない。そこで、外国為替市場で生じうる情報の不完全性を明示的に考慮したマーケットマイクロストラクチャー理論をマクロ経済モデルに導入することで、この状況を説明し為替レートの変動がマクロ経済に与える影響を分析した。 マーケットマイクロストラクチャーの分野では、情報の不完全性によって為替レートが外国為替市場におけるオーダーフローから影響を受けることが理論的、実証的に示されており、それが為替レートについてのパズルを解決する可能性が指摘されている。今年度作成したモデルはオーダーフローによる為替レート決定をマクロ経済モデルに導入することによって、名目利子率がゼロ近辺で留まっている二国間の為替レートの変動を説明することを目的としている。分析の結果として、為替レートとマクロ経済との関係は、マクロ経済のどのファンダメンタルズが外国為替市場のオーダーフローに影響を与えるかについての想定および外国為替市場の構造についての想定によって大きく異なることが示された。当該研究は現在論文執筆中であり、完成後はディスカッション・ペーパーとして公開するとともに、国際査読付き学術雑誌に投稿予定である。
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