本研究課題の目的は、奨学金制度変更に地域差があることを自然実験とみなし、(A)進学費用の低下がどのような家計の進学行動に影響を与えたのか、(B)進学時点で制度変更に直面した個人が労働市場での成果にどのような影響を与えたのかを明らかにすることである。本年度は上記計画の(A)に関して、分析データ整備を重点的に実施した。具体的には、(1)入手可能な市町村データの整備、(2)学校レベルデータの整備、(3)入手可能な個票データ(Japanese General Social Surveys(JGSS))による分析、を実施した。本研究課題遂行のためには、市町村データの整備および紙媒体で存在する学校レベルのデータを電子化する作業が必要不可欠である。 (1)入手可能な市町村データの整備として、事前に整備していたデータの整理し、追加的に必要なデータをweb、紙媒体等から入手し、整理した。データの整合性の確認及び基礎的な分析を実施している。 (2)学校レベルデータの整備として、出版社より提供された紙媒体データを電子化する作業を行った。分析のために入力データの整合性を精査している。 (3)個票データ(JGSS)を申請、入手し分析を行った。今後計画している個票データ分析のための基礎的な分析として位置づけている。暫定的な結果によると、制度変更により制度の影響を受けたグループの進学確率は統計的に有意に上昇する。今後追加的な分析を行い、頑健性を確認する。
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