本研究課題の目的は、奨学金制度変更に地域差があることを自然実験と見なし、(A)進学費用の低下がどのような家計の進学行動に影響を与えたのか、(B)進学時点で制度変更に直面した個人が労働市場での成果にどのような影響を与えたのかを明らかにすることである。 得られた結果は以下の通りである。奨学金申請のための収入基準の緩和の地域差を利用したDifference in Differencesおよび、家計の所得水準による影響の差を利用したTriple Differenceによる分析によると、制度変更に影響を受け、外生的に進学費用の低下した家計は、短大・大学への進学確率を高めるものの、その影響は短期的である可能性が示唆された。 本年度は、これまでに整備したデータを基に分析し得られた結果のうち、市町村データを用いた分析、個人データ(Japanese General Social Survey (JGSS))を用いた分析を学術論文としてまとめ、ディスカッションペーパーとして公刊し、セミナーおよび国内外の学会にて報告を行った。
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