研究課題/領域番号 |
24730247
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
湯川 創太郎 滋賀県立大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (30596945)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 国際情報交換 マレーシア |
研究概要 |
平成24年度は、(1)応用一般均衡モデルによる経済効果の推計に向けたデータセットの作成、(2)実際の交通・環境・地域に関する政策、政策策定にあたっての諸議論をモデルに反映することを目的としたヒアリング調査、の2つの研究作業を実施する事を当初目標とした、その成果は下記の通りである。 (1)応用一般均衡モデルによる経済効果の推計に向けたデータセットの作成:当初目標では、滋賀県環境分析用産業連関表(滋賀県地域の地域別産業連関表に、環境に関連するエネルギー消費の項目が付け加えられたもの)をもとに、都市域の経済活動の空間的な広がりを統計的に把握するデータセット(社会統計表)を完成させる予定であったが、準備の中で、本目的に合わせた滋賀県産業連関表の調整に手間取り、3月末の時点で作業中である。本研究で目指している社会統計表の作成は、SNAのサテライト勘定に位置づけられるが、近年の研究では、総合的なサテライト勘定構築の困難さが指摘されており、その反省をもとにした適切な内容の位置づけ、作成手法の確立が必要であることが判明したからである。なお、こうした調査を通じ、環境分析用産業連関表の近年の傾向やその課題点についての知見が得られたので、その概要を2つの学会で報告した。 (2)実際の交通・環境・地域に関する政策、政策策定にあたっての諸議論をモデルに反映することを目的とした文献・ヒアリング調査:交通政策運営に関する国際的なヒアリング調査として、マレーシアの陸上公共交通庁を対象にヒアリング調査を行い、同地で進められている公共交通政策の統合化政策の概要とその課題を分析し、学会で報告した。また、この調査をさらに深化させるために、マレーシアの研究大学、マレーシア国民大学との研究協力の可能性について、先方研究者と協議を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の研究については、データセット作成に関しては遅延がみられるものの、文献・ヒアリング調査については、予定以上の進捗が見られ、全体として「おおむね順調に進展している」と評価する。 データセット(社会統計表)作成の遅延の要因は、本研究の分析の元データとなる、都市域の経済活動の空間的な広がりを統計的に把握することに関して、国民経済計算(SNA)からの理解が不十分だったことに起因する。SNAの視点からはこれはSNAのサテライト勘定に位置づけられるが、その主の統計体系の構築に関しては2000年代後半より困難さが指摘されるようになっている。これらの研究を把握するのに時間を要し、実作業に着手するまでに時間を要する結果となった。 ヒアリングに関しては、当初はこれまでの研究代表者の研究の実績をふまえて、アメリカでの調査を行った上で、それを東南アジアでの政策提言につなげる事を検討していたが、マレーシアにおいても、公共交通の統合化政策が進んでいることが判明したため、アメリカに関する調査は日本での文献調査に切り替え、マレーシアでの調査に切り替える事にした。1年目の調査により、3年目にシナリオ分析を行うための、各主体(政府、事業者)の情報収集を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度も、都市域の経済活動の空間的な広がりを考慮した一般均衡モデル構築のためのデータセット(社会統計表)構築と、政策シナリオの構築を進めていくが、その方向性については、平成24年度の実績を踏まえて、下記のような形で小修整を行うことも検討するものとする。 すなわち、データセット(社会統計表)作成に関しては、当初計画では、小地域統計による都市中心部と郊外部の区分を基本に考えていたが、SNAのサテライト勘定に関する研究の中で試みられている、人々の生活時間を組み込んだSNA体系の研究の成果を取り込むことも検討課題に位置付ける事にする。これは、既存研究の成果を生かすという目的のほか、小地域統計の活用のみを前提とすると発展途上国の諸問題の分析が困難であると考えられるから、という理由からでもある。 交通政策の実態に関するヒアリング調査に関しては、マレーシア国民大学と共同で研究を実施することにより、より詳細な情報の入手を検討している。また、当初今後の検討課題として考えていた、アジア発展途上国への適用について、前倒しで実施できないかどうか検討したいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
年度内に予定していたヒアリング調査、年度内に発注した資料(道路交通センサス)の納品が4月となり、予定額に対し、使用額が過少となる結果となった。本研究費については、上記備品の購入と、実施するマレーシア国民大学との打ち合わせに関する旅費として、早期に使用する計画である。
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