平成25年度、平成26年度の反省点に基づき、平成27年度の研究においては産業連関表の基本的な作成手法に立ち返った問題点の洗い出し・検討を行った。その結果、複数地域の産業連関表を考える際に重要となる、移出入のパラメーターの仮定設定、試算に問題があることが明らかになった。これは、産業連関表を分析上の基礎とする応用一般均衡モデルを構築する際にも重要となる点であることから、27年度は移出入のパラメーター設定の再検討を行う事とした。 具体的には、国内モデルに関しては、交通統計からの都市の中心部、郊外部の相互間の移動の推計の再検討を行った。そうした統計の入手が難しい東南アジアでの適用に関しては交通量の実測が必要であると考えられ、実際に街路での交通量調査を行い、郊外の一地域(マレーシア国民大学の近郊地域)での自動車の流入の状況を確認した。 これらの再検討の結果、産業分野を簡略化した産業連関表(社会統計表)を用いた推計により、都市の周密性と交通政策との関連性を明らかにすることが可能となったが、本アプローチではその結果は依然移出入量の仮定に大きく依存している。現段階では、ここから交通政策に関する強い政策的含意を示すことは困難である。また、27年度に論文を公表するに至らなかったため、今後構築したモデルの構造や、その将来的な可能性を論文としてまとめるべく、準備を進めている。 また、マレーシアにおける実地調査の結果を踏まえた論文を一本公表しているが、これについても記述的な研究にとどまり、検討した統計作成技術を積極的に生かした内容になっていない。ただし、過去4年の研究の中で、東南アジアで実施可能な調査、実施困難な調査が明らかになっているので、東南アジアでの研究については、来年度以降の後継研究の中で実施していく予定である。
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