研究課題
本年度の最も重要な成果は、米国で導入されている地価税の一形態である、財産税の分離税率課税(split rate tax:以下、SRT)(財産税の税率を土地により高く、建物により低く設定した差別税率課税)の現状と課題、政策効果や自然資源としての土地の機能に及ぼす影響などについて、現地の主要関連機関でヒアリング調査及び資料収集を行ったことである。具体的には、(1)地価税に関する有数の研究機関であるリンカーン土地政策研究所では、SRTの政策効果に関する研究動向、都市環境に及ぼす影響、税務執行上の課題等について、(2)ピッツバーグ市のSRTについて最も詳しいカーネギーメロン大学の研究者からは、ピッツバーグ市ではなぜ1913年という全米でもかなり早い時期からSRTが導入されたのか、また同市ではその後90年近く経過した2001年になぜSRTが廃止されることになったのかなど、その歴史的経緯について、(3)米国で最もSRTの導入実績のあるペンシルヴァニア州のピッツバーグ市及びハリスバーグ市の都市計画部局の担当者からは、両市の都市再生計画におけるSRTの位置づけやSRTの政策効果(都心部の開発促進効果やスプロール抑制効果)、オープンスペースなど自然環境に及ぼす影響を定量的に分析する方法について、有益な情報を得るとともに、関連資料を入手することができた。以上の現地調査の結果を含む研究期間全体を通じて、米国でSRTを導入している自治体では、SRTによって将来世代にまで保全されるべき農地やオープンスペースまで開発されることがないように、開発区画規制やゾーニングなどの計画的手法が用いられ、一定規制されていることを確認できた。またその結果、日本でSRTを導入し、その実効性を確保するためには、私権の制限も含めた社会的規制と環境配慮を土地利用計画にいかに組み入れられるかが課題になるという示唆が得られた。
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公営企業
巻: 45(8) ページ: 36-60
MAGKS Joint Discussion Paper Series in Economics(Kassel University)
巻: 45 ページ: 1-25