研究課題
最終年度であるH27年度は、量的緩和策が銀行貸出へ及ぼす効果を検証した。そのために、個別銀行の財務データを用いてパネルデータ分析を行った。分析の結果、次の点が明らかになった。まず、2000年代前半に実施された量的緩和策は銀行貸出に対し正の有意な効果を持っていた。とりわけ、時期としては2002年度、業態としては第二地方銀行、財務状況としては不良債権比率の高い銀行によく効いていた。一方、2010年に採用された包括的金融緩和策と2013年に採用された量的・質的金融緩和策の銀行貸出への効果については、一部に有意な結果が見られたものの、頑健な証拠とまでは言えなかった。以上の分析結果は、伝統的金融政策のもとで検出された“銀行貸出チャネル”が量的緩和策のもとでも存在することを示唆している。なお、この研究成果は『経済分析』(内閣府経済社会総合研究所)にて掲載される予定である。その他、研究期間全体を通じては以下の研究を実施した。(1)FRBが2008年秋のリーマン・ショック後に採用した「市場とのコミュニケーション手段」についての評価を行い、時間軸政策に中長期の金利を引き下げる効果があったことを示した。(2)日銀が2001年から2006年に行った量的緩和策の効果について分析し、当時の株価上昇が企業の新規株式発行や設備投資を促したことを示した。(3)日本における伝統的金融政策と非伝統的金融政策のマクロ経済に及ぼした効果をそれぞれ推定し、両者間で比較を行った。その結果、質的な違いとしては量的緩和策は効果の発現がより早く見られるものの持続性はなく不確実性が高い、量的な違いとしては量的緩和策は伝統的金融政策と比べ生産への影響が大きく、物価への影響は小さいということが分かった。
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Discussion Paper New Series, School of Economics, Osaka Prefecture University
巻: 2016-2 ページ: 1-37