研究課題/領域番号 |
24730252
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
滝澤 美帆 東洋大学, 経済学部, 准教授 (50509247)
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キーワード | 無形資産 / トービンのQ / 資金制約 / 企業価値 |
研究概要 |
企業が保有する資産は、建物や構築物などの「見える資産(有形資産)」と、知識・技術や人的資本などの「見えない資産(無形資産)」に大別される。近年、後者を定量的に評価(可視化)し、その役割を正確に理解しようとする試みが進んでいる。 本研究では、企業別の無形資産を計測した。加えて計測された無形資産が、企業成長にどのような影響を与えるのか、そして、どのような種類の無形資産投資が、企業価値を増やすのかを実証的に分析した。具体的には、上場企業の財務データより、研究開発ストック、組織資本という2つの無形資産を計測し、無形資産が企業価値に与える影響を観察した。また、情報の非対称性などの問題で、資本市場が不完全であった場合、無形資産投資を行おうとしている企業にはより強い資金面での制約がかかっている可能性がある。そのため、本研究では、どのような企業が無形資産投資を円滑に行うことができているのかを、資金制約との関連で分析した。 分析の結果は以下の通りである。日本の場合、計測された無形資産は、研究開発ストック、および組織資本ともに企業価値に正の効果をもたらしていることがわかった。また日本では米国よりも、組織資本が企業価値へ与えるプラスの効果が強いことが観察された。このことは、日本においては企業内の組織資本の蓄積が企業価値にプラスの影響を与え、これらへの投資が減少することで企業価値が損なわれる可能性があることを示唆している。また、設備投資の十分統計量であるトービンのQを説明変数とする通常の設備投資関数を、有形資産のみの場合と無形資産も含む場合の2通りで推計した。その結果、無形資産も含む場合で、トービンのQの係数が正で有意な結果が得られた。以上より、設備投資行動のモデル化に当たって、無形資産を考慮する必要性が確認された。 以上の研究成果は経済産業研究所のディスカッションぺ―パーとして公開した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度以降の研究計画・方法に記載した、企業別の無形資産の計測も終了し、論文としてまとめ上げ、ディスカッションペーパーとして公表した。加えて新たな無形資産に関連した研究にも着手している。そのため、おおむね、研究が順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
日本における無形資産と企業価値に関する研究を終えたため、無形資産の国際比較を試みる。日米を始め、中国、韓国、ヨーロッパ各国企業における無形資産投資の推計と、無形資産投資と生産性の関係を検証する。
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