企業の生産要素である労働や有形の資本の他に、『無形資産』が企業成長に果たす役割について企業財務データを用いた分析を行った。無形資産に関しては、国際的に注目が集まっているが、マクロや産業レベルの国際比較データは存在しても、ミクロ(企業)レベルでの国際比較分析は未だ少ない。本研究では、無形資産投資が先進諸国、特にアメリカと日本において、マクロ及び産業レベルの生産性成長や、ミクロレベルの企業成長にどのような影響を与えるのかを分析することを目的としている。 得られた主要な結果は以下のとおりである。マクロ及び産業レベルの分析では、GDPに占める無形資産投資の割合が一人当たりGDPと正の相関を示していることが明らかとなった。日本とアメリカで、マクロレベルで成長会計分析を行うと、アメリカの成長の要因が無形資産の深化にあるのに対して、日本は労働の質(例えば高学歴化など)にあることがわかった。ミクロレベルで日米比較を行うために、S&P社の提供するCapital IQデータをつかって、日米企業の無形資産投資を計測した。その結果、米国では、無形資産投資の総資産に対する比率が大きい企業の労働生産性が高いことがわかった。一方で、日本ではそのような結果がえられなかった。加えて、金融危機前後の企業の生産性の変化を日米で比較したところ、米国では無形資産投資が多い企業グループの方が、少ない企業グループと比べ生産性の低下が小さく済んだことがわかったが、日本ではそのような結果は得られなかった。 以上の研究論文は、ハーバード大学日米関係プログラムの出版物として、公刊した。(出版物に関するURLはhttp://programs.wcfia.harvard.edu/us-japan/researchを参照。)
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