アメリカの6000万の成人は、銀行口座をもっていないか、十分な銀行サービスを受けられていない。なかでもヒスパニック人口の半数近くは、銀行以外の送金業者などで高いコストを支払うことを余儀なくされている。このいわゆるunbankedは、中間層へと上昇する経済的基盤が剥奪されていることを意味し,経済的・社会的分断の一因であり,結果でもある。本研究では、まず,unbankedが生じた要因を、金融規制当局、金融機関、ヒスパニック、この3つの視点から明らかにする。そしてunbankedの人々に口座とサービスを提供しようとする「経済的包摂」の優良事例の調査を通して他への適用可能性を検討し、経済的・社会的分断を埋める方途を探る。 かかる本研究の中、平成26年度は、伝統的金融サービス機関(TFSI; Traditional Financial Service Institutions)による「経済的包摂」の取り組みの成果と課題について,実証的に明らかにし,他への適用可能性について理論的に検討した。とくに,非営利のクレジット・ユニオンの中には注目すべき成果を上げているものがあるが,収益事業としては弱さがある。その成果と課題を明らかにし,「経済的包摂」を進める道筋を見通すことにした。 平成26年度の研究目的を遂行するため、研究実施計画に基づき、ジョージア州のアトランタ等、また、フロリダ州のマイアミ、オーランド等でフィールド調査を行った。前者のジョージア州は、代替的金融サービス機関(AFSI; Alternative Financial Service Institutions)のうち、少額、短期、無担保のペイデイローンを実質的に禁じた州であり、隣接するフロリダ州でそれは合法とされている。調査に基づいた両州の比較によって、平成26年度の研究目的を果たした。
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